第117話 そうだ、王都へ行こう! 12 ハイラの戦い様


「ハイライン=ベクトール……参ります!」




 ハイラの車輪が光り、飛龍に向かい突進していく。


 はええ! 一瞬で飛龍の上空につけ、抜いた剣でV字に斬る動作をする。



「ファウアステル!」



 V字の衝撃波が飛龍の頭に命中、二本の角の一本が消し飛び蒸気に変わる。すごいぞ、ハイラ。


 飛龍がのそっと顔を上げ、ハイラに向かい吼える。至近距離からの蒸気の攻撃。



「うわわっ……ひぃ!」


 慌てたハイラがわたわたと手を振り、頭を押さえ必死に避ける。


 飛龍はハイラに目標を定め、追いかけ始めた。



 ハイラはものすごい加速で真っ直ぐ飛び、体が勢いに振られながらスピードを落とし大回りで旋回。一気にスピードが落ちたところを飛龍に狙われ蒸気の塊が迫る。


「うわー! うわーっ!」


 また驚くほどの加速で真っ直ぐ飛び、遠心力に体が振られながらゆっくり旋回。



 あれ、最初は格好良かったんだが……。





「ベス! 撃て!」


 ベスの援護射撃。飛龍の頭付近を狙い、視界を奪う。


「あ、ありがとうございます! い、行きますよー!」


 飛龍が体当たりをして来たが、ハイラは車輪を真っ直ぐ加速させ、一瞬で背後に回った。


「せぇぇーい! ファウアステル!」


 V字衝撃波が飛龍の背中に着弾、鱗を数枚吹き飛ばした。



 その後も真っ直ぐ加速で逃げ、攻撃。曲がるときの減速で追いつかれ、ハイラがわたわた慌てて真っ直ぐ加速で逃げる……の繰り返し。


 ハイラは……曲がるのが苦手っぽい。


 直線加速はおそらくお姫様より上だと思う。あと場馴れしてないせいか、すぐに手で頭を押さえてしゃがんでしまう。あれは臆病な性格も出てしまっているな。




 ハイラが曲がろうと減速、またそこを狙われる。


「ベス! 撃てぇ!」


 飛龍の蒸気の塊を飛ばす攻撃を防ごうと、援護攻撃を撃つ。


 大きな翼に当たり、飛龍がガクンとバランスを崩す。ハイラがそのタイミングを逃さず飛龍の背中に向け、攻撃を仕掛ける。


「ファウアステルー!」


 見事命中で飛龍の背中から激しく蒸気が吹き上がる。大きく口を開け、吼えた飛龍は口から蒸気を辺りに撒き散らし、ハイラの視界を奪った。



「わわわー見えませーん!」



 ハイラが慌て出した。この速度で操作ミスったら、ケガどころじゃすまないぞ。



「落ち着けハイラ! 上へ飛べ!」


「は、はいー!」


 俺の声に従い、ハイラは上空へ加速する。






 飛龍は蒸気を吐き出しながら、列車に狙いを定め加速を始めた。


「まずい……! こっち来た……ベス! 撃て! 撃てぇ!」


 ベスがかまいたちを乱打。


 次々と飛龍に着弾するが、お構いなしに特攻してくる。



 決死の特攻かよ、ベスの遠距離攻撃ではあの巨体は止められない。翼を狙って落とせないか……。




 迷っていたら飛龍はもう目の前まで迫ってきていた。


「列車はなんとしても守るぞ……! ベス! 押し返せ! シールドだ!」


 俺はベスの後ろ足を掴み、列車の屋根にベスを固定させシールドを張る。


 ベスの額から青く輝く光が溢れ、飛龍の特攻を受けとめる。



「はね返せぇ!」


 ベスが吼え、頭をぐいと上げ飛龍の頭を跳ね上げた。飛龍は堪らず後方に離脱しながら口を大きく開き、蒸気の塊を俺に向け吐き出した。


「くそ! ベス! シールドアタック!」


 俺に向かってきた蒸気の塊をベスのシールドで弾き、列車に当たらない角度にそらす。



 だが蒸気の勢いが強く、一部が列車の屋根を破壊。


 その衝撃で俺の体が浮き、空へ舞う。




「……ベス! 何かに掴まれ! 踏ん張るんだ……!」


 俺は浮きかけたベスに指示、ベスが屋根の突起を咥え屋根に着地した。



 よし……ベスは無事だな……それなら後悔はない。







 列車から離れていく視界。



 空を舞った俺の体は無抵抗に地面へ向かっていく。



 ロゼリィが窓から泣きながら叫んでいるのが見えた。






 悪い……ベスの世話を頼むよ。








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