第118話 そうだ、王都へ行こう! 13 宿る勇者の光様
「うわわ! 今行きます……!」
俺が屋根から落ちたことに気付いたハイラが、飛龍そっちのけで俺に向かおうとしてくれた。
ありがとう、でもだめだ。
「バカ野郎! お前は騎士なんだろ! 多くの人の命を預かる列車を守れ!」
飛龍が体制を立て直し、再び列車に向かっていく。
「うう……! でも! ああああ……!」
「ベス! 撃てぇ!!」
俺は叫び、ベスがかまいたちを乱打。
至近距離で次々と飛龍に着弾し、削れて行く鱗が蒸気となり列車の後方を包んだ。
ベス、皆を守ってくれ……。
蒸気に包まれた列車から何かが飛び出し、固い地面に激突する寸前に俺の体は甘く優しい香りに包まれた。
「マスター……ご無事ですか……」
長い髪をなびかせ、俺を抱え走る女性。
バニー姿に俺が買ってあげた上着を羽織り、お尻の尻尾が月に照らされ輝いている。
「ア、アプ……ティ……」
「はい……何でしょうマスター……」
俺は驚きでうまく声が出ない。
アプティは俺を抱え、列車と同じ速度で走っている。
大股でジャンプしながら走る感じは、以前農園のおじいさんにかけてもらった早足の魔法にイメージが近いか。アプティがつけている足の武具が赤く輝きを放っている。
ふとアプティの顔を見ると、口あたりに煙が見える。
蒸……気……?
「……助かった、ありがとうアプティ! 今は何も聞かん。列車に追いつけるか!?」
「……ご命令ならば私は何でもします……その為に私は来ました」
アプティの足の武具が強く輝き走る速度が上がる。
口から吐く蒸気が雲を引き出した。
目が紅く輝き、数回のジャンプで列車に追いつく。
ベスがシールドで攻撃を防ぎ、ハイラがなんとか攻撃を繰り返し列車を守っていた。
よくやった、ここから一気に反撃に出る。
「ベス! 飛龍の翼を狙え!」
ベスが耳をピクンと反応させ、特大かまいたちを飛龍に放つ。
左翼に直撃、飛龍はバランスを崩し後退する。
「あ……ああ……よかった……! ご無事だったのですね!」
俺の顔を確認したハイラは泣き顔から、少し笑顔に戻った。
「ハイラ! 口を狙え! 蒸気の塊を吐く瞬間を狙うんだ!」
奴は下がるとき、威嚇の攻撃を仕掛けてくる。そこを狙うんだ。
「わ、分かりました! あなたの先ほどの言葉、とても心に響きました。自分よりも多くの人の命を救うという覚悟……私は今回のあなた行動を尊敬し、あなたの師事に従います! 私の騎士の覚悟を見て下さい!」
飛龍が大きく口を開け、蒸気の塊を作り出す。
ハイラは車輪を輝かせ、迷うことなく一直線に突っ込んでいく。いまだ、撃て!
「力あるものは戦え。力あるものは誰よりも早く立て。それは人の心を動かす勇気となる。その輝きを人は勇者の光と言う。我がペルセフォス王国の訓示です! 私は今それを見た……続く者はその輝きを受け継ぐ……! 消え去れ……! ファウアステル!!」
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