【書籍化&コミカライズ】異世界転生したら愛犬ベスのほうが強かったんだが ~職業街の人でも出来る宿屋経営と街の守り方~【WEB版】
第109話 そうだ、王都へ行こう! 4 毎日固いパンと豆の浮いたスープ様
第109話 そうだ、王都へ行こう! 4 毎日固いパンと豆の浮いたスープ様
「結構栄えているんだな、この街道って」
港街、ソルートンから馬車で出発してから一時間ほど。
ずーっと外の風景を注意深く見ていたが、こないだ行った隣街からソルートンへの帰り道より、人も、施設も賑わっている。
「あはは~そりゃあこの国で一番の都市、王都に行こうってんだからね~そこへ向かう道は人も多いさ~旅行で来る人の数たるや、かなりのものだよ~。その人達目当ての商売もこうして成り立つぐらいさ~」
さすがに日本のような風景とは全く違うが、なんというか賑わう田舎道を走っている感じ。
「すぅ……すぅ……」
俺の左に座っていたロゼリィからリズミカルな寝息。
朝早かったしな、あと寝れば酔うことも考えないしいいのでは、と無理に起こしてはいない。
左腕をがっしり握られ、肩でロゼリィの顔を支えている状況。
ああ、当然腕には例の感触がある。
欲に負けず、平静を保つという神のスキルはどうやったら伸びるのだろうか、ぜひ教えてくれ。
右には水着のラビコ。正面の席にはバニーのアプティ。
正直、窓の外の風景より眺めていたい光景である。
右のラビコはニヤニヤしながら俺を見ているし、チラチラ見るのがすでにバレているのなら、もう堂々と見てもいいのではないだろうか。ダメなのだろうか。
「ねぇ社長~一つ聞きたいんだけど~物理的に溜まっているものはどうしているんだい~?」
「……なんの話だ、借金か? そう捉えるからな。ちゃんと返すよ」
ラビコが俺の下半身を見ながらニヤニヤしているが、誘導尋問には乗らんぞ。
そうこうしている間にお昼が近くなり、宿場で馬車が止まる。
「お昼はこの宿場で頂こうか~降りて降りて~」
そこそこ混雑した宿場。
空いている席に座りメニューを見る。
「私は豆のスープかな~みんなは~?」
「……マスターはどうしますか、私はマスターと同じにします」
ラビコは即決。まぁ、旅慣れているようだし、メニューも知っているんだろう。アプティはメニューを見る気もなく俺のほうを見ている。
「う、うーん。えーと……す、少ないんですね、メニュー」
ロゼリィが困惑の表情。旅と言えば、各地で食べるご当地グルメが楽しみの一つだろう。よし、ソルートンじゃ食べられない物を選ぶか。
俺もメニューにざっと目を通す。
「えーと、豆のスープ、小麦粉団子のスープ、ジャガイモスープ……以上、か」
あれ、なんだろうこの選択肢の少なさ。ワクワクしねぇ。
周りの人を見ると、本当にその三種類しかないようだ。小さな深皿に入った具の少ないスープに別売りのパンをかじっている状況。
美味しそうな顔はしていない。無言で胃に流し込んでいる雰囲気。
「お、俺も豆のスープか、な……パン一つ追加で。ベスとパンは半分こかな」
「わ、私も……」
ロゼリィもメニューを見て楽しそうな表情が消えた。
「マスターと同じものを……」
「おばちゃ~ん。豆スープ四つ~! パンも四つで~」
「あいよー豆四、パン四!」
調理場のおばちゃんが元気よく返事をする。
「お待ち!」
注文した物が机に並ぶ。
小さな深皿に数粒の豆が浮いたスープに、見た目の悪いパン。
これでお一人様十G、日本感覚千円か。た、高くねーか? ソルートンならこの程度の物は二Gから四Gだろうか。ま、まぁ作ってもらって文句はないよな。どれ……。
「…………スープに味がねぇ。すこしダシが入っているぐらいか、パンもかてぇ……」
いや、これはあれだ。豆の本来の味を楽しんでもらうように、あえて薄味なんだろう。パンもこのぐらい固いほうが好きな人もいるしな、うん。
「こ、これは……そういえば昔食べた記憶が……」
ロゼリィは作り笑顔で食べている。はっきり言って美味しくない。
「あっはは~どうだい~これから王都に着くまでこういう物しか食べられないよ~? 王都も安く済ませようとしたら、こんなもんだよ~あっはは~」
ラビコが高笑い。
こ、これか……ラビコが言っていた内陸の実情って。
楽しい旅に、このクラスのご飯が毎日は気が滅入る……。
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