第108話 そうだ、王都へ行こう! 3 高級馬車でいざ恐怖の内陸へ様
「じゃあいっちょ豪華に王都旅行に行ってみよっか~あっはは~」
「はい! 楽しみにしていました!」
出発当日、早朝。
天気も良く旅行日和。
ラビコが高らかに旅行の始まりを宣言する。
ロゼリィもウキウキジャンプしながら、待ちきれない子供といったテンションの高さ。
「……待って……豪華にって、何……」
この旅行に掛かるお金はラビコへの借金。
いつか俺が返すお金、出来たら少なく済ませたいっていうのは普通の考えだよな。今豪華にっつったか、倹約じゃなくてか? 俺一人、のしかかる借金を考えテンションが下がる。
「も~社長~テンション低いよ~お金のことは諦めてパーッと行こうよ~」
「わ、分かった……よし、借金なんて怖くない! さん、はいっ! 怖くない!」
声を出して誤魔化すしかないな。
いくら掛かるんだろうか、この旅。
「気をつけるんだよ、みんな。ラビコがいれば大丈夫だろうけど、なにがあるか分からないからね」
「はい、お母さん。頑張ってきます!」
ジゼリィさん、ローエンさん、イケメンボイス兄さん、バイト五人組がわざわざ見送りしてくれた。
「お土産、待ってまーす!」
セレサが期待に満ちた顔で言う。
バイト五人組も王都には行ったことないんだと。かなり憧れの場所らしいが、さすがにもう五人分のお金は無理だ。宿の仕事にも影響出るし、また今度なみんな。
「じゃあ、行ってきます!」
荷物は少なめ。
ラビコに聞くと、この港街ソルートンからは内陸に向けて進むらしい。
一番近い魔晶列車の駅がある街までは、徒歩か馬車かの選択。
徒歩だと一日ちょいで、馬車だと半日ぐらいなんだとさ。そこから魔晶列車で二日ぐらい、列車で二日は結構だな。いわゆる各駅停車の鈍行列車らしい。
「アプティ、平気か」
「はい……アップルティの茶葉もたくさん持ちました……」
ああ、アップルティね……そういうことを聞いたんではなく……まぁいいか。
「ベスッ」
お、俺の愛犬ベスは今日も元気でかわいいな。ちゃんと犬用ゲージも用意したし、大丈夫だろう。
街の出入り口に到着。
ここからは馬車で行く。ラビコがすでに手配してくれていて、見ると黒塗りの高級五頭立て馬車。
「お、おいラビコ。この馬車高いんじゃ……」
「うん、高いよ~。いいじゃな~い豪華に行こうよ~あとこの馬車、王族貴族も使う特別仕様でさ~揺れや振動がほぼ伝わらないように加工されたやつなのさ~これならロゼリィも酔いにくいよ~」
なるほど、ロゼリィのことを考えてくれたのか。
浅はかだった、お金のことばかり考えて配慮を出来ていないな俺。さすがラビコだ。
「嬉しいです、ありがとうございます。乗り物酔いが一番怖くて……」
ロゼリィがほっと胸をなでおろす。
乗ってみたが確かに地面のデコボコの振動があまりこない。
車輪にサスペンションでも入ってんのか、この馬車。あと中の空間が広い、椅子もクッションがしっかりしている。この馬車の使用料いくらするんだろ……。
「途中休憩で何箇所か宿場に寄るよ~そこでご飯かな~」
ラビコが運転手に挨拶したあと、予定を話してくれた。魔晶列車に乗れる駅のある街まで、一、二時間ごとに宿場があるんだと。
馬車が四、五台平気ですれ違える、大きな街道を内陸に向けて進む。同じ方向や、向こうからくる人も多くいて、かなり栄えた街道だと分かる。
「あーわくわくします! 王都! 小さかったとき一回行った記憶があります。とにかく広くて大きくて、人もいっぱいいて毎日お祭りのようなところでした」
ロゼリィが俺の左でウキウキ話す。今日が本当に楽しみだったんだろうなぁ、いい笑顔だ。
「あ~王都以外の内陸の実情を知らないのかな~多分言葉を失うよ~あっはは~」
楽しそうにする俺達にラビコがニヤニヤ。内陸の実情? なんだろうか。
「社長とか泣いちゃうかも~帰りた~いって~あっはは~」
え? 何があんの内陸って。ちょ……怖いぞ。
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