第254話その頃のラベリティ王国第七部隊騎士団③

※もしかしたら残酷だと感じる描写があるかもしれません。m(__)m


☆☆☆



「たっ、助けてくれーーーーっ!!」


 ラベリティ王国の魔獣蔓延る森の中。


 多くの魔獣を倒し、躍進を続ける第七騎士団の下に、一人の男が助けを求め駆け込んできた。


 その男はどうやら商人らしく、荷物を運ぶ旅の途中で魔物に襲われたようだ。


 それも当然、今のラベリティ王国内を旅する事自体、自殺行為、無謀である。


 駆けこんできた男の服は酷く破れ、肩や腕には複数の傷があり、命辛々第七騎士団の駐屯地に駆け込んできたことが良く分かった。


 その上この男の商隊は、王城関係の商隊のようだ。


 だからこそ、第七騎士団の場所が把握できていたのだろう。不幸中の幸いと言えるかもしれない。


 一杯の水を飲み息が落ち着いた男は、「な、仲間が、仲間が、まだ森の中に……」と、絶望的だと思いながらも小さな可能性を求め、涙ながらに仲間の助けを団長に願った。


「すぐに商隊の下へ駆け付ける! 第一班と第二班は私と共に森へ向かう!」

「ハイ! ダンチョーノオッシャルトーリニー!」

「残りはここにて待機! 魔獣がこちらへと向かう可能性もある。皆警戒を怠らないように、見回りを強化しろ!」

「ハイ! ダンチョーノオッシャルトーリニー!」


 第七騎士団の隊長ジム・アドインは、慣れた様子で皆に指示を出す。


 一班と二班は、団長に選ばれた喜びからか、魔獣がいると分かっている闇夜の森へ行くというのに楽しそうだ。


「団長! わ、私も、お供させて下さい!」


 どの班にも所属せず、ジムの補佐官として常に陣地内で待機しているカーターが、一大事だと感じ名乗りを上げる。


 敬愛する団長の力に、少しでもなりたい!


 こんな時こそ、団長の傍にいたい!


 危険な場所へ行くのだ、自分が団長を守りたい!


 そんな想いを前面に出すカーターに、ジムは優し気な笑顔を向けてきた。


「カーター、君は私の大事な大事な補佐官だ。だからこそこの場を皆とともに守っていて欲しい」 

「で、ですが、団長……」

「フフ、我々は大丈夫だ。私たちにはこれまでこの森を進んで来たという実力がある。それに君にはあの商隊の男性の怪我を診て貰いたい。それにこれから怪我人が沢山運ばれてくる可能性も高い。カーター、私の補佐官としてその準備を……それこそが君の役割だ!」

「は、はい!……畏まりました。団長、どうかお気をつけて!」

「ああ、勿論だ。それに頼もしい皆が守ってくれるさ、なあ、みんな?」

「ハイ! ダンチョーノオッシャルトーリニー!」


 戦闘には自信がないカーターは、渋々ながらジムの意見を受け入れる。


 それに商隊の男性の様子を見れば、他の商隊の者達も怪我をしている可能性はかなり高いだろう。

  

 自分に出来る事をやろう!


 この駐屯地を守りきろう。


 カーターはそう決意し、尊敬するジムと、カーターを安心させようと下手な笑顔を作る先輩達を見送った。


「皆様、どうかご無事で……」と祈りながら。






「ふむ……良い香りがするな……商隊はあちらの方角だろう。皆気を引き締めていくぞ」

「ハイ、ダンチョーノオッシャルトーリニー!」


 血生臭い香りが漂う森の中。


 人間の血の香りに引き寄せられるように、魔獣達も集まってくる。


 ジム達第七騎士団のメンバーはそんな魔獣を蹴散らしながら、商隊目指し進んで行く。


 魔獣の中でも知能が高いもの達は、ジム達の姿を見つけると、何故か背を向け逃げて行く。


 ジムの中に住む ”何か” を本能で感じたのか、それとも ”処分(吸収)” されると怯えているのか……魔獣たちでさえ怯えるほど今のジムには ”何か” があるようだった。


 そして数分で商隊が居た場所へと到着した。


 その場は血が溢れ、魔獣たちの餌場と化し、商隊が運んできた荷物はばらばらになっていた。


「ふむ……残念、生きているものはいないようだな……」


 ジムの存在に気付き向かってくる魔獣。


 その物達(魔獣)はこの様な現場を見ても尚、楽しそうな笑みを浮かべる男たちに簡単に薙ぎ払われていく。


 そしてジムに怯え、逃げようとする魔獣達はどこからか伸びて来た黒く長い触手に絡めとられ、その場にいる男たちの栄養へと変わっていった。


「折角外部のものが手に入る所だったのだが……残念だな。だが……一つ ”あれ” を試してみるか……」


 残念そうな顔をしたジムは、何か閃いた後元人間だった者たちに近付いて行き、自分のエネルギーを送り込んだ。


 すると、一人、また一人と、千切れたはずの体が再生し新たなもの(人間)に生まれ変わった。


 最初に生まれたそのものは、カクカクと人とは思えない動きをしていたが、ジムからの栄養をたっぷりと受けると、どうにか人間に見えなくもない存在へと変化した。


「1,2,……全部で10体か……上下が違うものもいるが、まあ、誤魔化せる範囲だろう……お前達、自分の主が分かるか?」


 ジムの手厚い介護によって命を与えられた ”もの” たちが、「アー……」と声を出しガクンッと頷いて見せる。


 女性の体に男性の顔が乗っているもの。


 右手と左手の長さが違うもの。


 両足が変に長すぎるもの。


 首が今にも取れそうなもの。


 普通の者から見れば、異様な物体にしか見えないその ”もの” 達は、最後にもう一度ジムからの魔力を受けると、瞳に力を宿した。


「私の名は、ジム・アドイン。お前達の主だ、それが分かるな?」

「アイ……」

「お前達に命を与える。王城へ向かい私を迎える準備をしろ……急がなくていい、ゆっくりじっくり時間をかけて……全てを我々の手の中に!」

「アイ……アイアイサー……」

「フフフッ……良い子達だ……」


 第七騎士団は襲われた商隊全員を助けることは出来なかったが、数名の命を救う事が出来た。


 彼らは第七騎士団の駐屯地を出発する際、命の恩人である騎士団長のジムにとても感謝していたようだ。


「団長はやっぱりすごい人だ……」


 何度も何度も頭を下げ、首が取れてしまうのでは? とカーターが心配するほど、商隊の生き残り達はジムに礼を続けていた。


 勿論、最初に駐屯地に飛び込んで来た男も「アイ……アイ……」と泣く(鳴く)ような声を出し、感謝していた。


 彼らのその行動は、王都に到着するまで続いたらしい。


 ジムはまた新しい良い子達を育てたようだった。




☆☆☆




こんばんは、白猫なおです。(=^・^=)

ひじの痛みが悪化しておりまして……久しぶりの投稿になりました。m(__)m

やっとこの章終了です。お休みばかりで時間がかかってしまいました。頑張れ自分!

そしてお優しい読者様、ゆっくり投稿に関わらず、お付き合い下さり感謝しております。次章、やっとラベリティ王国へ出発です。宜しくお願いします。

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