第235話感動と驚愕の国王謁見
「ラベリティ王国第二騎士団団長、アーサー・ストレージでございます。リチュオル国国王陛下には急な要請に対し善処して頂きました事、国を代表し心より感謝申し上げます」
「うむ……」
遂にラベリティ王国からやって来た聖女支援要請の一団が、リチュオル国の国王であるアレクに会う日がやって来た。
ニーナの前で見せる甘えん坊なアレクの姿は今はどこにもなく。
大国を率いる国王として威厳のある姿を聖女支援要請一団の面々に見せている。
「面をあげよ」
との、アレクの腹に良く響くイケボな声と共に、ラベリティ王国代表アーサー騎士団長率いるラベリティ王国の面々がアレクに視線を送る。
幼いころからセラニーナに鍛えられただけあり、アレクは実は立派な体格と品のある風格を持ち得ている。
中身は甘えん坊さんでも、黙ってさえいれば見た目だけは完璧だ。
なので聖女支援要請の一団は思わず自国の国王とアレクを比べてしまい、リチュオル国の民が羨ましいと感じてしまう。
リチュオル国の王都までの道のりで、何度もこの国の素晴らしさと民達の幸せそうな笑顔を目の当たりにして来た聖女支援要請の一団。
今自分たちの目の前にいるのは癇癪を起してばかりの我儘な王ではなく、力強く国民を率いてくれる頼もしい王なのだ。
そう、自国の国王イアンディカス・ラベリティは、気に入らない事が有れば不平不満ばかりを家臣達にぶつけるばかりで、国の危機からは目を逸らし逃げるばかり。
それに若い頃はイアンディカスもそれなりに美しい王子であったのだが、今では弛んだオッサン臭の漂う残念王となってしまった。
リチュオル国の王とは何もかもが違い過ぎる。
出来れば自分達にも尊敬出来る王が欲しい。
心の中でそう渇望しながらも、次代の王となるディランジュール・ラベリティ王子には何の期待できないだろうと、諦めの血の涙を流す聖女支援要請の一団だった。
「皆、遠いところ魔獣の攻撃から良く耐えこの国へと赴いた……ここまでの旅路はさぞかし危険なものだっただろう。皆体調には問題はないだろうか? この国へ来て少しは休めただろうか? 不備はなかったか?」
アレクの優しい声掛けに思わず目頭が熱くなる聖女支援要請の一団。
リチュオル国に入ってからは本当に別の国だと強く感じるほど、平穏な生活や移動を送らせてもらえた聖女支援要請の一団。
だがラベリティ王国内での旅路はそれはそれは危険極まりなく、何度も命を落とし掛け死を覚悟した瞬間が度々あった。
この国王にはそんな自分達の苦労が分かっているのだ。
自国の王ならば 「何をやってる! 遅いではないか!」 と罵りそうなものなのだが、アレク王は自分達を労い、それはそれは優し気な笑みを向けてくれた。
これがもし他国のものを前にした ”国王としての演技” ならば、アレク王は一流の俳優以上のものだろう。
だがアレク王は本当の本当に心の底から聖女支援要請一団に同情していた。
どっちかというとアレクはこれからラベリティ王国内で起こるであろう恐怖に同情している気持ちが強い。
それはニーナの魔法をよく知るが故のものでもある。
ラベリティ王国はアランを指輪ごと国から追い出した事で、あのセラニーナの鉄壁で完璧な防御の魔法を国から消してしまった。
それは想像するだけで恐ろしい事だとアレクには分かる。
セラニーナが亡くなった際、アレクも国が荒れるのでは無いかと多少の心配をした記憶があるからだ。
だがリチュオル国はセラニーナがしっかりとシェリルに大聖女の跡を引き継ぎ、そしてシェリルもまたセーラへと大聖女の役割を引き継いでいた。
だからこそ、このリチュオル国はセラニーナが亡き後平和を保てているが、もしセラニーナが何もせず消えてしまっていたら……
そう考えるだけでもアレクは自分の背中に冷や汗が流れるのが分かった。
だからこそ、そんな国が荒れに荒れまくっている中を、生きて脱出出来た聖女支援要請の一団には感動さえも覚えていた……本当に頑張ったよねーと心の涙を流して……
「……グスッ、アレク国王陛下には……温かいお言葉を頂き有難うございます。大変な旅路ではありましたが、神の奇跡もあり……何とかリチュオル国にたどり着く事が出来ました。これも大聖女様の祈りのお陰ではないかと、我々は深く感じております……」
「ほう……神の奇跡と……? 旅の途中で何か神力を感じる事でもあったのかな?」
「は、はい……実は苦しい時に天使に助けられました……リチュオル国側から飛んで来たその可愛らしい天使はそれはそれは魅力的な少女の姿で我々を救って下さいました……」
「ふむ、そうか、天使な少女か……」
アーサーはリチュオル国の国王が天使の話を聞いても馬鹿にするでもなく、驚きもしない事に驚いた。
リチュオル国内では度々天使の話を耳にしていたが、国王のその姿を見てやはりあの天使はこの国を愛しているのではないか……とそう感じた。
だからこそ天使はリチュオル国へと向かっていた自分達を助けてくれたのだろう。
ならばきっとこのリチュオル国への支援要請は成功する。
あの夜の天使との出会いは、そう思える様な奇跡だったのだ。
「あー……実はな……我が国には、その天使様に助けられた者が大勢いる」
「っ!! そ、そうなのですか? 大勢も?!」
アーサー達が奇跡だと感じたあの出会いが、リチュオル国では当たり前のように起きているというアレクの言葉に、国があれだけ荒れている時にそんな奇跡が起こらないラベリティ王国は、もう既に神に見放されてしまったのではないか……と聖女支援要請一団の面々は不安になる。
いや、だが、自分達も救われたはず。
だから国は絶対に……いや、多分大丈夫なはず。
そう思いたくても自国の王族達の行動を思い出すと、神に見放されても致し方ないのでは? とそんな不安がつきまとうアーサー達だ。
「フフフッ、実はな、この私もそして息子である王太子のレイモンドも、我が国に続く凶悪な呪いから天使様に救って貰ったばかりなのだ……」
「の、呪い……ですかっ?!」
「うむ……その呪いの恐ろしいところはな、我々がまったく気づかなかったところにもある……ラベリティ王国ももしかしたらその呪いの影響を受けているかも知れないな……」
「呪いの影響……?」
アレクの話は正しいもので、ニーナがリチュオル国にかけられたあの呪いを解いた事で、これまで蔓延っていた悪感情が守りのとれたラベリティ王国へと全て流れて行った。
セラニーナのあの指輪の守りがあったままならば、それらの悪感情を弾いていただろうが、残念ながら無知な王族がアランと共に指輪迄も追放してしまったため多くの影響を受けてしまったのだ。
魔獣が多く出現したことも、そして国に多くの災害が発生していることも、そして……とある人物の怨霊がラベリティ王国へと流れてしまったことも……その影響の結果と言えるだろう。
「そしてもう一人……天使に救われた青年がこの国にはいる。その者はラベリティ王国に深く関わる者であるのだが、其方たちに心当たりはあるだろうか……?」
「……我々に関係ある者……ですか?」
頷くアレクを見ながら聖女支援要請一団は考える。
だが誰一人 ”関係ある者” を思い浮かべるものはいないようだ。
黙り込んでしまった一団をジッと見つめながら、アレクは一つ小さなため息をついた。
そしてアーサー率いる聖女支援要請一団の面々がよく知る者の名を呼んだのだった。
「アラン、こちらへ、ラベリティ王国の皆にその元気な姿を見せてやるがいい」
「はい、失礼いたします」
聖女支援要請一団は驚いた。
死んだと言われているアラン王子が、今自分たちの目の前に現れたからだ。
そしてそれだけでなく、アランの姿を見て尚更驚いてもいた。
痩せて頼りなく人の顔色ばかりを伺っていた ”情け無い王子” と呼ばれていたアランの姿はどこにもない。
アーサー達の目の前にいるアランは、騎士に負けない程の体格と、そして自信溢れるその姿を持ち得ていた。
そうまさに、自分達が望む理想の王そのものだったのだ。
「ア、アラン王子……何故……」
驚きしかない聖女支援要請一団。
アランは自国の騎士たちを前に、以前は見せなかった満面の笑みを浮かべたのだった。
☆☆☆
こんばんは、白猫なおです。(=^・^=)
なんだか頭が痛くって……きちんと修正出来たか不安です。
気圧のせいかなー。
さてさてやっとアランとアーサー達が会いました。どうなるかなー。早くラベリティ王国に行きたいですね。
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