第三話 「免除生の存在」
【最後の受験生】の世代以降にもすぐに社会へ出ることが許された高校生が稀に存在する。それが『免除生の存在』である。
最後の世代以前からあった制度で、社会が欲している能力を保持している高校生のみが行使できる権利。代表的な例だとインターハイ優勝や甲子園大会優勝の経験がある生徒が該当する。本当に限られた優秀な生徒のみが出来るのがこの制度。だから近年部活動がより一層活発になっている要因の一つだ。
黒星も勿論その制度は知っているが・・・
「この高校にそんな好成績な人材がいたか?しかも、俺らの世代に」
自身の高校を卑下するのは少々心が痛いが、とてもじゃないけど何かで優勝などできる生徒なんてこの高校に入学してから聞いたことも一度もない。ましてやそこまで頭が良いとは言えないⅭ級高校にいるとは考えられない。
「そもそも居たら英雄扱いされるじゃないの?学校の評判も貢献するし一石二鳥以上に。」
「それは高等学校で共有される大会ならな」
「つまり学校共有できない彼女独自の能力が『免除の対象』なわけか・・・しかも異例の待遇を受けていると見た。」
「相変わらず勘が鋭い。彼女:新田光織は俺らと同年齢にして国独自の国家資格を持ち主で、今の時代にはとても貴重な人材って云っていた。」
「誰が?」
「雑誌にそう書いてあった」
「度を越えた待遇を【冷遇】と知った上で結構心捻じ曲げて育ったもんだ。」
友哉がその雑誌で読んだ内容を全て把握するのは難儀だ。さっき俺は『異例の』待遇と呼称した、周りから大切されてきたらしいが彼女にとって周囲がどの様に映っただろうか?簡単に想像できる。
「心が捻じ曲がったって彼女も言われたくないと思う」
「なんで?」
「一番捻じ曲がった人には言われたくはないだろう、普通。」
「残念!俺は一周回って普通だ」
「嘘つけ!・・・まあ、そんな事よりも彼女は異例の免除生。俺らとは別世界の人間だ。気に掛ける必要はない。下手に関係を築けば痛い目を遭うのは明白。」
「ふ~ん。俺以外にも厄介な生徒が居たんだ。」
彼は黒星の嫌な気配を感じ嫌な予感をした。彼は普通の人ではない。【常識人】なら自分が言った意味が容易に想像できると思う。だが、黒星は常識の範囲外にいる存在なので【常識人】から見て理解不能な行為を普通にやってのける。
相手の領域に堂々と足を踏み入れ荒らしだけ荒らして去っていく。まるで台風みたいな奴に目を付けられた人はひとたまりもない。けれど、今まで彼の被害に遭った人は奇跡的にいない。何故なら興味や対象が目まぐるしく変化するため、最後の最後まで相手を観察する行為はしなかった。「多分、今回も同様だろう」と思っていた。案の定、この時の黒星はニヤリと黒い顔していたのをよく覚えている。
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