第37話
ローズが沢山の客の会計をしている時、アリムは自分の足である場所へ向かっていた。
それは街の中心地にある、地下街。
なんの変哲もない赤レンガの店に入ると、そこには大きな体でヒゲの生えた男が1人立っていて、そこでありったけの金を支払った。
そして、連れて行かれた先は地下街へ続く長い階段。
すすむにつれて薄暗く、壁に設置されているロウソクの火だけが頼りだった。
昨日、アリムはまたあの魔女に出会った。
そして、自分にこう行ったのだ。
『ローズの母親は、地下街で働いている』と……。
それは、ローズの言っていた通りだった。
ここ地下では、女が体を売る店が並んでいる。
アリムが入ったことは1度もないが、そんな場所があるということは、知っていた。
魔女の言葉が本当かどうか、最初は半信半疑だった。
『どうして、そんな事を知ってる?』
『水晶さ。これにかかれば、見たいものが見える』
そう言い、魔女は懐から手のひらよりも小さな水晶を取り出した。
そして、その水晶に魔女が右手をかざすと……白いモヤが水晶全体を包み込み、それが消えたときこの地下が映し出されたのだ。
『これがローズの母親だよ』
汚れたベッドの上に座る疲れきった顔をしている1人の女性に、アリムは目を奪われた。
かなり老け込んでみえるが、口元や鼻のかたちがローズにそっくりだったから。
『俺に、どうしろってんだよ』
『両親がいない悲しみは、お前がよく知ってるだろう』
魔女の言葉にアリムは目を見開いた。
一瞬、この人は人の過去まで見えるのかと思った。
しかし、『街の人から生い立ちを聞いたぞ』と言われ、その発想は打ち消された。
『あぁ、そうか』
実は、アリムとサリエには両親がいない。
妹といいながらも血のつながりはなく、互いにあの店の前に捨てられていたのだ。
2人の名付け親であり、育ての親である小柄な男はアリムが10歳の頃病死した。
それからというもの、残された妹と店を守るためアリムは必死で働いてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます