第8話
犬が好き。
犬を飼っている。と言うことだけでどうしてこうもいい人に見えてしまうのだろうか。
職場によく来る業者の男性。
洋服の上からも筋肉の状態が分かるほどのがっしりした体型に、ドサっと足元にバッグを置く仕草で
一歩引いて接してしまいがちなのだけど。
その人のズボンのお尻に、これでもかと犬の毛が付いていただけで、なんだ怖そうだけどいい人なんだ〜と勝手にいい人判定してしまう。
職場の同じビルにあるグループ会社の社長。
みごとな白髪を綺麗にセットして、スーツもビシッと着こなす。
声が大きく、社員への指示がキツく聞こえるので苦手だったのだけど、ある日仕事帰りの彼を見かけたら彼にはとても似合わない可愛いトイプードルを連れていた。
いつものスーツ姿に黒のビジネスバッグをリュック型にして背負い、となりには自転車を押して歩く奥様がニコニコと笑っていた。
なんだ、いい人なんだ。
果たしてこの判定はどのくらい当てはまるのか…
朝の犬の散歩をしている人々を凝視しながら職場へ向かう。
************
本日のお客様
馬渕様。
小学生の女の子と幼稚園の男の子を連れた4名でご来店。
女の子は着くなり靴を脱いでキッズルームに入り本棚の本を物色しはじめる。
男の子は靴がうまく投げなくてしゃがみ込んでしまった。
するとママがスッとしゃがんで手際良く靴を脱がせて、女の子の分も合わせて揃える。
「あ、すいません」
とパパがママに軽く頭を下げる。
???
「いえとんでもないです。こちらこそこんな事にお付き合いしていただいてすみません」
???
気になる〜受付帖の耳はいつになく大きくパタパタとしている。
他のお客様同士の会話や業者の方などの会話が筒抜けにならないようなボリュームでBGMを流しているのだが、そのボリュームを落としたいくらいである。
そこへ営業の東山君がやってきて
どのような物件をお探しで。
と話を始めた。
「娘と2人で暮らせる広さで、犬を飼えるマンションをお願いします。」
と。
ええええ!ご姉弟じゃないんですか???
思ったそのままを口にしてしまう東山くん。
(そこは、ご夫婦じゃないんですか??と私たちは変換して聞いていた)
キミが担当でよかったと私たちは思う。
「そうなんです、娘が毎日通学で拓くんの家の前を通っていて、拓くんの家のワンちゃんが可愛くてたまに触らせていただいたりお散歩させていただいたりしてるうちに、どうしても自分でも飼いたくなってしまったようで。
今のマンションは賃貸でペット禁止なので住み替えようかと。
マンションの購入は初めてで契約とかよくわからないので拓くんのお父さんに願いしてついてきていただいたんです」
それだけの理由でこのようなところについて来てもらうのだろうか。
マンション購入が初めての人なんて沢山いるしこちらはプロなので任せていただければいいのに。
と事務職ながら思った。
そうだったんですねー!
拓くんのお父さんいい人ですね!
東山くんと気になるポイントが違いすぎた。
拓くんのパパはただいい人なだけなのだろうか。
そうだ。拓くんのパパも犬を飼っている。
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