第7話
電車で隣りに座っていたガタイのいい男性がスッと立ち上がった。
次の駅で降りるでもなく、端っこの席に移動するでもなく、ただ隣の列の空席に座った。
モノレールで隣に座っていたお婆さんが駅に着く前に立ち上がり、おもむろに後ろの席に座った。
こんなことが何度か続いたので、急に自分に何か人に避けられる重大な欠点があるのではないか…と気になって仕方がない。
双子の姉に聞いてみると。
「歌ってるからじゃない?」と。
へ????
どうやらよく鼻唄を歌っているみたいなのだ!
先日、日の出桟橋から船で浅草に行こうと船着場に行ったら、松本零士さんのデザインした「ホタルナ」が停泊していた。
うわ〜宇宙船みたいでカッコいいな〜
さすがヤマトの生みの親!
と心の中で思っていたら、となりで姉が「そうだよねさすがヤマトだよね」と。
双子だから以心伝心なのかと思いきや、鼻唄を通り越して「戦艦ヤマト」を歌っていたというのだ!
なんというこだ!無意識に!
それからは気づいたら注意してと頼んだところ
エレベーターを待ってる時に「はい。歌ってる」と言われ、スーパーでのお買い物の最中に「はい。歌ってる」と言われ
最近は電車で隣の人が席を変わることを気にするのをやめた。
そして今日もきっと歌いながらパート先へ向かう。
**************
本日のお客様 石橋様
40代半ばくらいの品のいい女性。
担当は下村さん
下村さんは50代の男性でどことなく訛りのある穏やかな話し方をする。
前職はペルシャ絨毯の販売をしていたとかで海外駐在経験もあるため、外国のお客様対応も慣れていて色々な国のお客様が彼を指名した。
さて、石橋様はどうやら独身のよう。
お茶を出すたびに「いつもありがとうございます」と丁寧に御礼を言ってくれる。
大人しそうなのだが、下村さんと話すとコロコロと品のいい笑い方でよく笑う。
そんな石橋様だが、実はかなり積極的な性格で頻繁に下村さんにLINEをしてくるらしい。
もちろん物件の事がメインのようだけど、普通1日に何軒も回るところを時間の都合といって何回にも分けて内見を希望する。
珍しいなと思っていたら、その理由が判明した。
どうやら石橋様は下村さんの事を好きになってしまったらしい!
物件が決まったらお食事に行きませんか?
と誘われたと下村さんが鼻の下を伸ばして話していた。
下村さんは離婚経験はあるものの独身で、ハーレイで出勤する様なワイルドな一面もある。
内見しながらそんな話しをしたのだろう。
お客様と営業マンの大人の恋の行方も気になるところだ。
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