第5話

「朝起きて白湯を飲む女性は好きになれないな」

TVからそんなセリフが聞こえてきた。

どういうカテゴリーなんだろう。


「海辺でヨガをやる人って好きじゃないな」

以前友達が言っていた。

人はどうしてそんな大きなカテゴリーで人の好き嫌いを決めるんだろう。


私は朝起きて白湯を飲む

そして海辺ではないけど寝る前にヨガをする


それがなにか? 


身体に良いものは良いんだものあなたたちにどう思われようと私は白湯を飲むしヨガもする!!

と1人で売られてもいない喧嘩を買って駅までの道を大股で歩く。エスカレーターを使わずに階段で!

パート先に着いてエレベーターを待つ間はいつも踵をどすんどすんと上げ下げしている。

こうすると骨粗鬆症にいいらしい。

2階にあるお手洗いに行くときは必ず腕を後ろで鳥の羽の様にパタパタしながら上がる。

こうすると二の腕がやせるらしい。


そういうのも、好きになれないカテゴリーにはいるのだろうか…

 

…………………………………………


本日のお客様

磯貝様


50代後半の白髪多めの男性と40代後半から50代前半の女性

初めてのお客様には顧客カードを書いていただくのでお茶をお出しして、カードを男性にお願いすると

躊躇なく女性の方へ渡した。


営業の女性が来る。

我が支店のエースだ!

「初めまして〜田畑と申します〜」

にこやかな挨拶が特徴的だ。


顧客カードに目を通し、「えっと。ご購入されるのは…」と女性を見る。

「はい、彼女です。」と男性。

夫婦ではないとみるとすかさず、お二人のご関係は?と尋ねる。

「知り合いです」


おっと!受付帖の耳が大きくなる瞬間である。

知り合い??

現在は都内の閑静な住宅街に住んでいる女性が、

なんの土地勘もない埼玉県で家を探しているという。

田畑さんが思わず「え。なんでそんな良いところに住んでいて引っ越すんですか???」割と大きな声で聞いた。


いいぞいいぞ!

受付帖の耳はパタパタしている。


「・・・・」返事に困った女性。

そこで田畑さん「あ!近くに住みたいんですね〜」と男性を見る。


そのあとどのくらいの予算なのか、ローンを組めるかという、話になってきたところで。

どうやら女性はパートで働いているだけなので、ローンは組めない。

ご両親から受け継いだ賃貸アパートの家賃収入があるからそれでいけると思っていたのだろうが、それでもローンは難しいらしい。


エースの田畑さんもお手上げである。


笑顔でお客様をお見送りした後に、私たちのところへ来て

「あれは騙されてるね。」

男性は自分の身の上は一切話さず、お金を全て女性に頼っている関係と見えるらしい。

姉御肌のエース田畑さんはこれまで何人ものお客様を相手にしているのでピンと来るのだそう。

「助けてあげたいけどー何もできないよね」

姉御は切なそうな顔をしながら接客スペースがあるフロアから事務所のあるフロアへ戻って行った。


磯貝様どうか騙されていませんように。


そう。「受付帖」とは、40代中心のパート仲間で「嬢」では図々しいのでということで「帖」になったらしい。なかなかのセンスである。



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