第4話

朝7時・・♪♪♪

街のスピーカーから朝の音楽が流れる


夕方の音楽は都内でも流れたりするが、朝の音楽は田舎ならではなのか。


最近はスマホのアラームの前に目がさめるので先にアラーム解除しようとスマホを開けると、夜中に娘からLINEが2通。

しかもボイスメール。


慌てて聞いてみると、ぎりりリリ・・・ぎりりリリ・・・・

お手本のような歯ぎしりの音。


もし隣に娘がスヤスヤと寝ていなかったら誘拐でもされたかとか何か緊急事態なのではないかと大騒ぎをするところだっただろう。


これはお正月に実家に帰り久々に娘と布団を並べて寝たときの話。

娘を揺り起こし確認すると「ママの歯がなくなっちゃいそうだったから録音したの」


えええええええええ!私????

歯ぎしりは勝手におじさんだけのものだと思っていた私は驚いてしまった。

それとも私がおじさん?


それ以来友人からの旅行のお誘いに躊躇している。

流石にあれは聞かせられない。


そういえば職場の隣に新しい歯医者さんができたから相談してみようかな・・・


と思いながら年始の職場へ向かう。


年末年始の職場は苦手・・・どのタイミングでどの人に挨拶をすればいいのか悩んでしまうから


年末はまず店長に「今年もお世話になりました。どうぞ良いお年をお迎えください」

そして課長と目があったので席まで行って「今年もお世話になりました」と言ってから隣にいた次長にも向かって「良いお年をお迎えください」とまとめて済ませ、その後よくお話する女性社員に「良いお年を〜」と手を振りながら事務所を出た。

ドアを閉める直前に視線の片隅にもう一人の課長が目に映る・・・


ドアは閉まる。


どうしよう・・・と思いながらもエレベーターを待っていると先ほど挨拶をすませた課長も隣に並ぶ。

私の表情を気にした課長が「どうかしました?」と聞いてくれたので

「実は遠藤課長に挨拶し損ねちゃって」

と言いながらもエレベーターに乗る。

「あーー彼はそういうの気にするタイプだなー笑」

「えええ。まずいなあ」

と言いながらもエレベーターは1階に到着。


「お疲れ様でした・お先に失礼します」

と、なんの解決の努力もせず帰宅してからの年始。


よし!遠藤課長に一番に挨拶をしよう!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

本日のお客様

伊藤様・吉永様

ご結婚と同時に新居をお探し。

よくそんな大きなことを同時に進められるなと思う。


男性は30代後半から40代(なんせ事務員は個人情報はわからないのであくまでも推測)

中肉中背で堂々としていて、おしゃれな雰囲気がある。

女性は20代だろう

個性的な帽子を被っているおかげでグッとおしゃれ上級者に見える。

年齢的には離れていそうだが雰囲気はそう離れていな感じ。


男性は一流企業にお勤めでこれならすんなりローンも通るだろう

と思われたのだが・・・


営業と銀行さんが笑うとも困るともつかない表情で話をしている。

話をつなぎあわせてみると、

隠していたわけではないのだけどという前置きで

離婚をしていて養育費がローンを組もうとしているメインバンクから毎月引き落としになっているらしい。

そうすると年収がガクンと減ってしまうので通らないとのこと。


別の銀行ならバレないし、そもそも引き落としになっていなければ問題はなかったらしい。


ローンが組めなくなるほどの養育費とはどのくらいなのか

子供が沢山いたのか・・・

前の奥さんはしっかりしていたんだろうな

毎月の振込は信用できないから引き落としにしたのだろう。

逆にどれだけ信用がなかったのか・・・などど考えてしまう。


再婚のお客様の多さに時代の変化を感じる。

(私が知らなかっただけともいうけれど)


離婚は失敗なわけではない


縁があってまた一緒に過ごしたい相手と出会えて。

是非是非今回の結婚は末長くお幸せに続きますように・・・


ローンが通りご希望のお家が買えますように。





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