第2話

線路沿いの道を歩いていると男子高校生と女子高生がすれ違ったのが目に映った。


別になんてことのない状況なのだが、その数秒後男子高校生が振り返って女子高生を見つめていた。

が、女子高生は前を向いて歩いたまま…

男子高校生は数秒後前に向き直りまた歩き始める。

その数秒後、女子高生が振り返り男子高校生を見つめていたのだ!

しかし男子高校生は前を向いて歩いたまま…


私はなんという瞬間を目撃してしまったのか!


勝手にドギマギしてしまい、どちらかに伝えたくてたまらなくなる。

今、彼がこっちみてたよ!

今、彼女もあなたをみてたよ!!


結局どちらにも伝えることのないまま歩き続けるしかなかった


始まりそうなドラマが始まらなかったのだ…

でも運命ならばまた次の機会があるだろう。

このタイミングのずれもまた運命なのだろう


そんな大袈裟なことを考えながら今日もパート先の不動産屋に向かう。


************************


本日のお客様

笹田様


30代の男性お一人様


白いTシャツにブルーのデニム

シンプルイズザベストの装いに、オレンジの小さなトートバックがセンスの良さをアピールしている。


どうやら離婚して一人暮らしのようだ。

今のアパートの更新で退去しなければならないらしく

お手頃なマンションをお探しの模様…


お一人で住われるのですか?


との営業からの問いになんだかハッキリとした答えが返って来ない


一緒に住もうと思ってる人はいるんですけどね…


どこまでプライベートな情報を話すべきなのか躊躇しているのがわかる


どうやら資金の方の問題で一人での購入は少し厳しそうだが、結婚を考えているのならそのほうが銀行の審査が通りやすいんですよね〜との言葉に


え。そんなつもりは…


どうやらお酒を飲むお店の女の子と付き合い始め、近々一緒に住むことになっているらしい。

思わぬところでプライバシーが丸見えになってしまう。

借金の理由や金額もずるずると、聞き出され

居心地が悪そうに何度も座り直す。


いやはや不動産屋とは恐ろしい場所だ!


それだけの借金があるとなかなか難しいですね。

前の奥さんには保証人になってもらえないのですか?と聞かれたところで


また出直します


と言って足早に店を出て、店の目の前に停めてあった何代か前の型のクラウンで逃げるように去って行った。


離婚した相手の保証人になる人なんているのだろうか…

良いおうちが見つかりますように…

そしてまずそのクラウンを売りましょうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る