そして、事は起こる。起こるべくして。

―interlude side Asagao―


「んー!合宿、楽しかったねー!」

 新都市交通の車内にて、帰宅組の四名が呑気に合宿の感想を述べていた。

「ええ、本当に。またこんな日々が過ごせるなんて、思ってもいなかったわ」

 咲恋女史が感慨深そうに感想を述べる。

「本当ですねー。ああ、本当にこれって現実なのかしら―?」

 燈火女史も、夢見がちな笑顔で答える。この人は、咲恋女史の事の事になると人が変わるな。今も瞳をキラキラさせているし。

「んー!?現実!現実!」

 そんな燈火女史の言葉の意味も分からぬまま、夏奈ちゃんが適当に答える。

 全く、この子ってば。だが、そこがいい。それこそが救いなのだと、今の私は知っている。

 だから笑う。こんな日々が、何時までも続けばいいのに、と。




 新都市交通の終点から、私たちは新快速に、女史たちは小豆色の私鉄に乗り換えて、帰路につく。

 我らが住処である嗣ちゃんの家に着いたのは、既に帳も下り、闇が支配する世界へと姿を変えてからだった。

 玄関先から漏れる光から、嗣ちゃんは既に帰宅している事が伺える。

「ただいまー!」

「あら?」「あっ……」

 夏奈ちゃんが開いた扉の先には、嗣ちゃんと、こちらを振り向く一人の影。


「……は?」

 私の口から漏れた音は、驚愕か、畏れか、もしくは只の息遣いか。


 その影がこちらを向く。


 見知った顔。

 それもその筈。

 何故なら。

 その顔は。

 その表情は。

 その笑みは。


「あさがおちゃん、久しぶりね。会いたかったわ」


「マ……マ?」


 私を縛り、放り投げ、挙句、捨てた、人の、顔、だった。


― interlude end―

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