8、ミステリーの真相
第49話 幸せな日常
ザワザワ……
俺たちが教室に入ってきた瞬間教室がザワつく。
全く別の方向を向いていた人達もクラスの空気を敏感に察知し、ドアの方を見て、目を見張る。
無理もない。先週まで険悪だったカップルが仲良く一緒に登校してきたのだから。
「やー、やー!つーくんおはよー!」
その空気を一瞬にして破った日浦が坂城と鳥羽を連れて俺たちの方に近づき、隣の彼女には聞こえないくらいの声量でこっそり耳打ちする。
「有言実行しちゃって。おめでと!」
「おう、サンキュ」
リア充そのもののようなやり取りをして、ふと思い出す。
「あ、そうだ。今度みんなで遊びに行こーぜ!」
服装面の問題も解決した。以前彼女達からの誘いを断ってしまった、ということもあるが、素直に彼女たちと遊んでみたい、と思ったからだ。
少し断られるかもという不安もあったけど、杞憂だったようだ。
「もちもちー」
「俺も部活次第だけど都合つけとくわ」
「いいねー!あ、でも東雲さんも来るよね!」
「うん!行きたい!」
日浦が隣にいる彼女にまで話の輪を広げる。彼女達は特別仲がいい訳では無いと思うが、彼女がいない所でほかの女の子たちと遊ぶのはたしかにNGだろう。あの小悪魔後輩とのことは一旦忘れよう。もっとも日浦と坂城を誘う前に既に彼女に声はかけてあったのだが。
とりあえず坂城、日浦からいい返事を貰えたことに満足して微笑む。鳥羽はやっぱり知らん。
そんな会話をしていると無個性なチャイムが割り込む。
「あ、もうホームルーム始まっちゃうね!約束だよ!」
日浦が約束だよ、と言いながら指を空に差し出す。エア指切りだった。俺達もそれに応じて指を差し出して。笑いあってから各自席に着いた。
そんな模範的なリア充の青春の一ページ。
そう。このラブコメはハッピーエンドで終わりなのだ。それ以上でもそれ以下でもない。
だから今から始めるのは……ただの番外編だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます