第46話 『告白』

「私は、君のことが大嫌い!」


「……え?」


 …………あれ???


 思わず声が出てしまう。え、今の告白するはずのシーンだよね?嫌いっ

 て言われた?あれ?あれれ?


 お義母さんがニヤリとしてる。あれれ?なんで?


「デートの時急に帰っちゃったのはごめんなさい!でもさ!だからって他の人とデートなんてサイテーだよ!」


 ……あぁ、そりゃ反論できんわ。


 自分の作戦で自分の首を締めてちゃ世話ねぇな。羞恥心が一気に襲ってくる。正直恥ずかしすぎてもうココニイタクナイヨ……


「そういう事ね。じゃあお引き取り願いますわ」




「お母さんは黙ってて!」



「「はい?」」


 綺麗にお義母さんとハモった。え、何もっと僕にダメージ食らわせるつもりなの?もしかして東雲さんってS?


「でもね、さっきのはすごいカッコよかった!」





 ……ん?




「今はこの気持ちを表すことは難しいけど。でもきっと、多分この気持ちってそういうことなんだと思う。だから、さ――」


「――この気持ちに答えが出るまでは……一緒にいたい」




 何この可愛い生き物。



 目を逸らして顔を赤面させる姿は俺のアイディンティティをクライシスさせるのには充分だった。使い方合ってんのかな。違う気がする。でも、こんなふざけたことでも考えてないとなんというか身が持たないのは確かだった。



 ただ……そんなことを言われてしまったら主人公として、男として、それに答えないわけにはいかないな。



 それにしても、今思えばくだらないゲームだ。好きになった方が負け。でも正直勝敗はどうでも良いらしくて。今の俺はまるで主人公みたいじゃないか。なら別に負けたっていい。だって俺は主人公なんだから。彼女に一緒にいたい、って言われんだから。


 なら俺はそれに答える必要がある。


 俺は心を決めると照れて横を向いている彼女に向かって、二度目の一世一代のセリフを言う。



「俺と付き合ってください!」




 五人もいる他人の家の客間。告白にはどう考えても不向きな場所なはずなのに今だけはここには彼女と俺の二人しかいない神聖な場所のように感じられた。そこに響き渡る俺の声。告白。


 いや、実際には響いてないのかもしれない。なんせ緊張で声が上手く出てるかも分からないのだ。だが答えには期待が込められている。だって俺の事をかっこいい、って言ってくれたんだから。


 時計の音が一定のリズムを刻む。


 東雲をチラッと見てみると、相変わらずにこやかな笑みを浮かべている。そして、百点満点の笑顔を千点の笑みに変えて、答えを発す。



「ん、いいよ!」



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