第42話 自撮り
ゲームセンターにやってきた。そして俺達はその中でもクレーンゲームのエリアにいた。ひかりんはプリクラを撮りたがってたが、さすがに東雲の前で密室に入るのはリスキーすぎる、と思って断った。いやそれもあるけど一番は普通に恥ずかしかったからです。
ひかりんはむー、とほっぺたを膨らませていたが、手頃なキーホルダーを百円で取ってプレゼントしたら笑顔になった。なんか子供扱ってるみたいでいいわコレ。
「先輩って優しいですよね」
唐突にそんなことを言われた。恐らくスタバを奢ったことやキーホルダーをプレゼントしたからだろう。これは優しさと言うよりも今日ひかりんが付き合ってくれたことに対するお礼、対等な交換のつもりだったんだが。
「キーホルダーのことか?得意だから取っただけだよ。世の中適材適所だよ」
「……そうじゃないんですけど。ま、それが無自覚かは知りませんが話す気がないならそれはそれでいいですよ」
俺の返答が気に食わなかったみたいでひかりんはまた少しむすー、とする。また、なんかクレーンゲームで取らなきゃダメなのかな。
「そういえば鳥羽先輩達見失っちゃいましたけど……もう尾行はやめたんですかね。でももしいたとしてもキョロキョロできませんし」
確かに今俺たちの視界には鳥羽達がいない。というかスタバを出てからずっと見ていない。後ろにいるはずだろうが、さすがにキョロキョロする訳にもいかないしな。
俺はポケットからスマホを取り出すとロックを解除せずにカメラを開く。
「あ、先輩自撮りですか?私持ちますよ」
ひかりんはそれを見るとすぐに意図を察して俺からスマホを取って余った方の手でピースをする。
なんかこの子頭の回転早いんだよな。前世探偵かなにかかな。いや泥棒猫キャラなんだから怪盗か。
今カメラのピントは俺たちを全く捉えずにその後ろに向けられている。内カメを使って自然に鳥羽達の位置を確認するためだ。
「あ、居ました。じゃあ撮りますね。はいピース」
「え、ちょ、」
パシャ
「うわぁー先輩すごい顔してますね。ほら」
あまりにも自然な流れで写真を撮るものだから驚いて変顔になってしまった。
ひかりんからスマホを受け取り、先程撮った写真を見ると、そこにはしっかりポージングをして笑みを浮かべているひかりんと、一応カメラ目線だけど口が空いてて間抜け面を晒している俺がいた。
「うわっ、こりゃひでぇな」
いくら突然のこととはいえ真のリア充ならすぐにポージングして笑みを浮かべる事など容易いだろう。修行が足りんな。
「ホントですよ〜。あ、プリクラならそんな顔でも加工すればイケメンになりますよ!」
「よし!次はこっち行こっか!」
……全くこの子は。どんだけプリクラ撮りたいのかしら。あとそんな顔って、サラッとディスって来るのやめてくれませんかね?
「あ!置いてかないでくださいよ〜」
後ろでなにか言ってたけど聞こえてないふりをして歩き続けた。
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