第40話 友達


「なーなー、つーくん東雲さんとなんかあったか?」


 休み時間。いつもの四人で教室の後ろで話していたところ、俺達以外には聞こえないように小さな声で日浦がボソッと話題を変えてきたのだ。


 でもそれも無理もない。月曜日から金曜日の今日まで俺と東雲は殆ど話をしていなかったのだ。第三者から見れば「先週あれだけイチャイチャしてたのに、今こんなに疎遠になってるってことは、土日になんかあって別れたのか……」という状態だろう。


 クラスでは「それ」について触れない空気が出来ていたのだが、ついに触れてきた。しかし俺からしたら完璧なタイミングだった。触れられない空気というのも嫌だったし、それに気を使わせるのも嫌だったからだ。かと言って俺から話すのもなんか違う気がするし。日浦マジグッジョブ。


「まぁ、ちょっとな」


 含みを持たせた言い方をする。正直ここで否定をしても強がりにしか見えないような気がしたからだし、ちょっとあったのは事実だ。全然ちょっとではない気がするけど。



「そっかぁ。良かったら私たちが相談に乗るよ。勿論無理に、とは言わないけど」


 日浦は優しく微笑みながら答える。


「うん。何でも話聞いたげる」


「おう!俺たちはいつでもお前の味方だぜ!」


 それに便乗する形で坂城と鳥羽も俺の事を優しく見つめる。


 ……あぁ、良い友達を持ったな。


 心からそう思った。今まで友達がいなかった俺からしたら、彼女達のその言葉はあまりにもありがたいものだったのだ。


「日浦、坂城。ありがとな」


「「うん!」」


二人は小さな声ながらも返事を元気よくハモらせた。


「ちょ、俺は!?」


 うっせー鳥羽。お前全部事情知ってるくせに、というか全てはお前が原因のくせに、よく俺の味方とか言えたな。だが、表面上俺に手を差し伸べてくれているのを無視するのは印象悪いだろう。


「ははは、冗談だよ。鳥羽もありがとな。みんな、すごい嬉しい。でも大丈夫だ。月曜にはきっとまたイチャイチャしてる姿見せられるから」


前半、具体的には「鳥羽ありがとな」の部分は嘘八百だったが、後半は心の底から出たものだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る