第38話 人生二度目のスタバ
そしてやってきた今週二度目、人生二度目のスタバ。前回と違ってスタバのメニューとオススメのカスタムを暗記してきた俺は滞ることなく注文し席へと着く。
店内は込み合っており、雑談に花を咲かす女子高生や一人で音楽を聴きながらパソコンを操作する大人まで様々だ。一見密会には向かなそうな場所だが、木の葉を隠すなら森の中、というように逆に密会に適している場所なのかもしれない。
そんなことを考えていると、抹茶クリームフラペチーノを持ったお姉さんが俺の向かいに座ってきた。
「じゃあ、何から話そうか。あ、その前に自己紹介まだだったね。東雲梓葉。大学一年。梓葉でいいよ。よろしくね。えーと君は」
「月瀬歩です。月の瀬戸際を歩くって書いて月瀬歩です。梓葉はさすがに馴れ馴れしいので梓葉さんでいいですかね」
社会人の取引みたいな圧を感じた俺は口語では必要のない漢字込での自己紹介をした。
それにしても梓と梓葉、か。すごい似てるな。一郎二郎三郎でも二文字違いなのだから一文字違いは四捨五入すれば同じみたいなものだろう。うん、何言ってんだ俺は。
「で、説明、だよね。でもちょっと待ってもうすぐ着くはずだから」
「着くって、誰が……」
聞くと梓葉さんはニヤッと笑みを浮かべて入口の方に視線を向ける。それに釣られて見てみると、視線の先にはタイミングを見計らったかのように入ってくる男がいた。
男はスタバに入るとキョロキョロ見回しすぐに俺たちのことを見つけると爽やかスマイルで近寄ってきた。
「ごめん!待った?」
「ちっとも待ってないから帰れ」
やってきたのは鳥羽翔。いやまじでなんでいるの。梓葉さんが呼んだにしても早くないですかね。まだ東雲と別れてから三十分くらいしか経ってないんですけど。
「酷いなぁ。せっかく来てあげたのに」
わざとらしく瞼に指をやり、しくしくと泣いている振りをする。女の子がやったら萌えるかもしれない仕草だけど鳥羽。テメーはダメだ。普通の感性を持った人からしたらキモイだけだ。
「まぁ言っても無駄だと思うから諦めるけど……来たからには全部話せよ?」
「おう。あずねえ、全部話していいってことだよね?」
「うん。言ってやんなさい」
そうして長い長い話が始まった――
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