4、物語は成すべくして変貌を遂げる

第26話 とある電車にて


 ……はぁ、何してんだろ私。


 月瀬君から一方的に解散を告げて、今私は一人で電車に揺らされていた。南船橋駅から蘇我駅に向かう京葉線快速だ。この時間の京葉線は祝日といえど確実に座れる。ただ、幕張でイベントとかがあるとひとたび満員電車になるのでやめて欲しい。


 ガタンゴトン ガタンゴトン


 線路と電車の間で一定のリズムが奏でられる。普段は心地よく感じる無機質な音も、今はその無機質さが私の心を締め付ける。


 ……さすがに月瀬君に悪いことしちゃったかな。


 それも今に始まったことじゃないけれど。


 お姉ちゃんの言うことなんて気にしないで、あのままデートを続けることも出来た。


 勿論あのままデートを続けても、最初みたいに仮面をつけたままでいるのは無理だっただろうけど。


 というかデートの後半はほとんど仮面を意識していなかった気がする。正直あまり期待はしていなかったけど、気がついた時には仮面を被っていない姿で彼に接していた。


『遊びも程々にね。本気なら覚悟してね』


 さっきのお姉ちゃんの言葉が頭の中で響き渡る。やっぱりお姉ちゃんは苦手だ。別に嫌いという訳では無いけれど。誰よりも美人で優秀で。そして、誰よりも残酷だ。


 月瀬君は私のことをどう思ってるのだろう。完璧美少女だとか、人のことを好きになれない冷たい女、とか。仮面を被った謎の多い女の子とか。もしそんなことを思ってるなら筋違いだ。私は少し人より色んなことが出来るようで何も出来ないような中途半端で、それでも普通の女の子だもん。


ガタンゴトン ガタンゴトン


私のそんな気持ちを嘲笑うかのように電車は一定のリズムを刻む。


……あ、やば寝そう。


そんな一定のリズムと精神の疲れは私を眠らせるのに十分だった。



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