第14話 親切

「さて、服も買えたし、目的達成だな」


「おい鳥羽、それはなんだ」


 服を買って外に出ると、いつの間にか鳥羽も服を買っていたようだ。俺が持っている袋と同じ袋が右手にぶら下がっていた。


「明日もこの辺でデートするんだよな?」


「うん……その予定だけど」


「なら、ほい、これあげるよ。俺が考えた最強のコーデ」


 鳥羽はその袋をひょい、と俺の所へ投げる。


「え、え?」


 咄嗟にそれを受け取ったが、訳が分からなかった。


「マネキン買いでいいって言ったじゃん……しかもさすがに申し訳ない」


 上下で揃えたとしたらなかなかの値段になるはずだ。


「いやいや、いいって。償いみたいなところだから。でもその代わり絶っっ対にデートにはマネキン買いした服で行けよ。これは予備とか今後に遊ぶ用だよ。サイズは問題ないはずだ」


 これを単純な親切と思えばいいのかそれとも裏があるのか。というかなんでサイズわかるんだよ。分かるもんなのか?それ。


 しかし、貧乏性が不信感に勝った。


「うーん、まぁ折角だし、じゃあ貰おうかな。さんきゅ。でもなんで?」


「マネキン買いってつまりは誰でも八十点まで上がれる便利グッズなんだよ。勿論イケメン俳優とかが着れば変わってくるだろうけどね。普通はそれで十分なんだが、百点を目指すには個々にフィットしたやつを選びたい。それがこのコーデ、って訳だよ」


「じゃあこれデートに着ていけば良くない?わざわざマネキン買いしなくても……」


「ダメだ。最初のデートは自分で選んだやつでいけ。数あるマネキンの中からそれを選んだのはお前なんだからな。それが誠意ってもんだろ」


 ……納得したようなしてないような。でも言いたいことはわかった。無料でくれるならそのくらい従うべきだろう。


「わかったよ。着てく着てく」


 近くにあった時計を見ると、針は三時を指していた。集合から一時間経ったのか。長かったような短かったような。だが目的は果たした。長居は不要だな。


「解散で。また月曜な」


「おいおいおい!待て待て待て!」


「ん?何そんな繰り返して。なんかおかしかったか?」


「まだ一時間しか経ってないぞ。夜はここからだろ?」


 一応補足。午後の三時です。午前の三時にショッピングモールが空いてるわけもないしな。この後予定があるわけでなないし別に良いけども。


「んで、その夜に何すんのか?」


「ナニするかなんて、決まってんだろ?」


 何故か「何」のイントネーションが変わっていたが、一体ナニをするんだろうか。

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