第15話 久々のゲーセン

「ゲーセンだー!」


 まるで「海だー!」ってはしゃぐ高校生みたいになってたがただのゲームセンター。


 それにしても、ゲームセンターか。来るのは久しぶりだな。中学生の時はずっと通ってたっけ。中三の時の受験勉強で行かなくなって、気がついたら疎遠になってたな。


「よっしゃ!何やるか?」


「何でもいいぞ」


 鳥羽は小学生に戻ったかのようにはしゃいでいた。鳥羽ショタ。なんか料理にありそう。フレンチな手羽先的な。フレンチな手羽先ってなんだよ。


 しかし、はしゃいでいるのは俺も例外ではなかった。表面上はつまらなそうにしてるが、内心すごいワクワクしている。中学生の時はどんなゲームも基本的にくまなくやってた身だ。何をやろうとも負ける気はしないな。格ゲーでも音ゲーでもクレーンゲームでもなんでもかかってこい。


 しかしそんな余裕は一瞬にしてなくなるのであった。



「嘘……だろ……」


 数分後、俺は絶望の波に飲まれていた。その絶望の波の発生源は……今俺たちの視界に映るゲームだ。俺の目が闇に染ってるのとは対照的に鳥羽の目はピカピカと輝いている。


 俺たちの視界にあるゲーム、いやこれをゲームというのは違うか。どこのゲーセンにもあるが、決してゲームではないもの。ゲーセンに置いてあるもので唯一俺がやった事のないもの。


 そう、今俺たちはいわゆるプリクラとやらの前にいた。


 しかし、いくらプリクラが陽キャの道具といえど、男子だけで入るものでは無いはずだ。そのくらい俺にでもわかる。男子禁制のプリクラとかがあるとかも聞いたことあるぞ。


「いや、何でもとは言ったがさすがにそれは無いだろ…… わかったこれも冗談だな。冗談なんだな!」


 というか、いくらなんでも鳥羽自体も嫌がってるはずだ。男子だけでプリクラに入るのは誰からしても拷問だろう。


「いや、割とガチだったんだけどね?でも確かに月瀬と二人でプリクラは映えないよなー」


 そうそう、お互いのためにやめとこ、な?


「うーん、いい案だと思ったんだけどなぁ。よし、ちょっとナンパしてくるわ、ちょっとまってて」


 ……は?



 今なんて言った?ナンパ?いや、そこまでしてプリクラ撮りたいの?なんで?てかリア充ってナンパなんてホントにしてんの。なら俺もたじろいでいられないのか?


 しかし、俺が困惑してる間にも鳥羽は俺の元へ離れ、近くの女子高校生の所へ向かっていた。


 コイツ……ガチだ!


 それなら俺も覚悟を決めるしかない。何に対する覚悟かは分からないけど。

 口角を上げて表情を作ってから深呼吸をする。


「月瀬ー。後輩女子と偶然会ったんだけど、ほらこの子」


「や!初めまして!月瀬歩!よろしくね」


 鳥羽の連れてきた子に向かってめちゃくちゃ明るい声で挨拶をする。


「……月瀬どうしたの?」


 鳥羽に若干引かれた気がする。なんでだよ!!

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