少年ふたりとその祖父が、隕石の影響により巨大化・凶暴化したオオウナギと戦うお話。
巨大な怪物と戦うSF、というか、モンスターパニックものの映画をそのまま小説にしてしまった作品です。
なので実際にはSF要素の、「むしろあんまりSFしすぎてない感」が魅力的。時間遡行技術や宇宙由来の未知のウイルスなど、ギミックとしてはバリバリ登場するものの、そのどれもが「そういうもの」レベルの説明にとどまっているのが心地よいです。本筋を邪魔せず、といって強引すぎるわけでもない絶妙なバランス。
おかげで集中できる本筋の部分、怪物の生態とその暴れっぷり、そしてその撃退の顛末がまた最高でした。まさにモンスターパニックに求める娯楽そのものの味わい。
実はオオウナギ自体を本作で初めて知ったのですけれど、もう元の時点で結構怪物っぽさがあって、そこがまた楽しかったので読後にぜひ検索してみることをお勧めします。こんな生き物がいるんだ……。
土用の丑の日を絡めた名調子なんかも、翻訳ものモンスター映画のお遊び感に似たものがあって大好き。
絶妙にふざけながらもしっかりシリアスというか、ほんのり心に染みる少年の友情物語でもあったりするところが楽しい作品でした。