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「おいしいね、これ」

アサちゃんはポパイベーコンをおいしそうに食べている。

残り物なんだけどね。昨夜ヨーコさんが材料を買ってきて作ってくれた。

「ねえ、バターある」

「あるかなあ」僕は冷蔵庫の中を探ってみる。

ヨーコさんの持ってきてくれるコッペパン以外はあまりパンとかたべないからなあ。

「これでいいですか」

僕はチューブ入りのバターを見つけてヨーコさんに見せた。

「いいわよ、それで。バターでグンと美味しくなるの」

僕とヨーコさんはそれをつまみながらビールを飲んだ。

そう言えば僕がここに来てからほぼ毎日、ヨーコさんはこの部屋に帰ってくる。

「そうね、シュン君が来るまではヨーコさんが帰ってくる時間にあたしいなかったし、たまにいてもすぐ出かけなきゃならなかったから」

「いいよねこの粉の味噌汁」

アサちゃんがどこかで大量に仕入れてきた粉の味噌汁。

僕はこの味が好きだった。

「やっぱり朝は味噌汁がないとね」

「ところでアサちゃんは下で何かやる予定なの」

「特にないよ。シュン君使いたいなら使ってもいいよ」

「特にはないんだけど」

「そう。シュン君に下見せたことあったっけ」

「ヨーコさんが見せてくれて」

「そうなんだ」

そう言いながらアサちゃんは残っていたポパイベーコンをご飯の上にかけた。

あーそれ、僕がやろうと思っていたのに。

それはともかく、アサちゃんが何かやろうとしてるってヨーコさんが言ってたから、

当然下を使うのかなと思っていた。

フーゾクにいたときもそこそこ稼いだはずなのに、

特に何かに使ったってわけでもないようだし。

もしかしたら一番奥の部屋の人と何かを企んでいるのかな。

そう言えばまだ一度も会ったことがない。

「今日はどこかでかける」

めずらしくアサちゃんが僕にきく。

「僕も仕事探そうかなあ」

「それはかまわないけど、ずっとここにいてね」

「実はヨーコさんのところで雑用やらないかって言われてて」

「弟子入りするの」

「そうゆうわけじゃないよ」

アサちゃんはにっこり笑って僕のほうに何かを投げた。

ふさふさしたキーホルダーに鍵がついている。

「外に出るときは鍵かけてね」

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