10
「ねえヨーコさん。アサちゃんは何で僕をあの部屋に住ませたんでしょう」
「そうねえ。見つかっちゃったから」
「見つかったんですか」
「タイミングがよかったのよ」
「タイミングですか」
「親戚ではないんでしょう」
「違います。最初にヨーコさんに会ったときはそうゆうことにしましたけど」
「てゆうか、親戚かってきいてきたのはヨーコさんのほうですよ。僕はうなずいただけで」
「そうだよね。でも、あの時も本当に親戚だとは思ってなかったの。そのほうがいいかなって思っただけで」
「気を使ってくれたんですね」
「探してはいたみたい」
「何をですか」
「同居人」
「どうして」
「それはね、あたしもぼんやりとしかわからないんだけど」
「何かをはじめようとしていることはまちがいない」
アパートの近くの立ち飲み屋。思いのほか繁盛している。
入れ代わり立ち代わり人が入ってくる。
じっくり飲むような場所ではないのだろう。店の外で飲んでいる人もいる。
「この辺は労働者が多いからね」
作業着のヨーコさんはすっかりまわりに溶け込んでいる。
「仕事した方がいいんですかね」
「それはあなたしだい」
「ですよね」
「何か感じるの」
「何となくですけれど」
「あたしのところ来る」
ヨーコさんがニヤリと笑う。
「雑用する人がいないのよ。前はおかみさんがやってたんだけど」
「あの工房ですか」
「師匠も気に入ったみたい」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます