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「住めないでしょう、ここには」
「ルームシェアだよ」
「ルームシェア」
僕はアサちゃんの笑顔に何となく納得させられてしまう。
というか、思っていることを言い出せずにいる。
そういえばあの頃からそんな感じだったよなあ、この子。
でも僕をよく助けてくれた。親父のことをみんなに言われたときも。
この子が言うと誰も言い返せなかった。
言い返せないことを言っていたわけでもないのに。
「ちょっとシャワー浴びてくる」
アサちゃんはそう言って、着替えとタオルを持って僕の前を通り過ぎていく。
僕は何をしていいのかわからずに壁に寄りかかっている。
「冷蔵庫にビールは行ってるから飲んでもいいよ」
アサちゃんの声が聞こえたけれど、
ビールを飲みたいわけでもなく一応返事だけしてそのまま動かなかった。
ここがこれからぼくの部屋になるのか。
実感がわかないまま僕は部屋の中を見ている。
女の子の部屋のわりには質素な感じだった。キラキラしたものがない。
でもほんとにいいのかな。
さっき再会したばかりだし、特に魂胆があるとも思えないけど、
もしかすると僕みたいな誰かを探していたのかもしれない。
「ねえ、シュン君。パンツ忘れちゃった」
「一番上の引き出し。右側」
アサちゃんが何を言ってるのかはよく分かった。
さっきあの辺を出したり入れたりしていたし。でもさあ。
「見つかった。シュン君の好みで選んでいいよ」
わざとじゃないよね。まあタオル腰に巻いてこの辺ウロウロされるよりはね。
「地味目が好み」
僕がカーテンで仕切られた脱衣所にパンツを置くとアサちゃんが言った。
そんなこと言ったって同じような白っぽいのしかなかったよ。
「リボンがついてたりしたのがあったでしょう」
「そんなのわからないよ。ひとつひとつ広げてるわけじゃないし」
「それよりブラはいいの」
「あたしそんなにないから。別にどっちでもいいの」
そうなんだ。僕はアサちゃんの胸がどうだったか思い出そうとしたけど思いだせなかった。
「貧乳好きでしょう」
「まあどっちかって言えば大きい人は苦手」
「やっぱりね」
僕はアサちゃんが風呂から上がってきた時思わず胸を見てしまった。
アサちゃんはそんな僕を見て胸をグッと張って見せた。
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