「久しぶりだね」

アキバの公園でボーっとしていたときに、アサちゃんに声をかけられた。

といってもその時僕はアサちゃんのことを全く思いだせなかった。

「無理もないよね。どのくらいいたんだっけ」

「ひと月ぐらいかな」

あの頃の記憶はほとんど断片的で細かいことはほとんど覚えていない。

なんとなくそう答えたけど間違ってはいないと思う。

「よく覚えてたね、僕のこと」

「どうしてだろう」アサちゃんは僕の顔を見て笑っている。

アサちゃんは僕がソープランドのボーイをしていた時、

コンパニオンで同じ店にいたらしい。

僕はコンパニオンの女の子と話したことがなかったし、

控室に入ったこともなかった。

店の中ですれ違った女の子はみんな同じに見えたし。

「いまはフリーター」

「そうなんだ」

「必要なだけ稼いだから。そういう女の子多いみたい」

フーゾクもバイトのひとつなんだよね。

「ねえ、シュン君は仕事してるの」

昼間からこんなところにいたら仕事してるようには見えないよね。

「現場作業をたまに」

「ねえラーメン食べない。おごるから」

「女の子一人でラーメン屋は行きにくいの」

僕が躊躇してると、アサちゃんは僕の手をひっぱって歩きはじめた。

「どう、この部屋」

「今住んでいるところよりいいでしょう」

ラーメンを食べたあと、アサちゃんは僕に見せたい部屋があるからといって

僕の前をスタスタと歩きはじめる。

「どこまで行くの」

「すぐそこ」

しばらく歩くとアサちゃんはコンクリート二階建の建物の前で止まった。

そして建物の外階段を上がっていく。二階はアパートになっていた。

「でもこの部屋間違いなく人が住んでるよね」

「そうだよ。あたしの部屋だから」

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