第7話~夏海サイド~

そう思っていると、光平がずんずん歩きだしD組の前で立ち止まった。



ドアを開けるために手を伸ばしている。



「ちょっと光平!」



思わず声を上げていた。



あまり勝手な行動をしていると、それこそ梓のようになりかねない。



突然飛んできたボウガンにこめかみを撃ち抜かれた梓の姿を思い出し、一瞬吐き気がこみ上げてきた。



それをどうにか押し込めて光平の隣に立つ。



「開かねぇよ」



ドアを開けようとしているが、本当に開かないみたいだ。



その様子にホッと胸をなでおろす。



「入れるって言ってたはずなのにな」



隣りにやってきた凌が首を傾げている。



「とにかく、自分たちの指示されたA組に行こうよ」



こんなところで指示以外のことをして、死ぬのはまっぴらだ。



「そうだな」



凌は頷き、あたしたちはそれぞれの教室の前まで移動した。



A組の前まで来ると途端に寒気がした。



まるでこれ以上先には行くなと、誰かに言われているような嫌な感じがする。



ドアの小窓の奥は真っ暗で、目を凝らしてみても何も見えない。



横を見てみるとB組とC組の前にもそれぞれが並んで立っていた。



しかし、なかなかドアを開けることができないようだ。



「みんなで、いっせいにドアを開けよう」



凌が一歩前に踏み出し、ドアに手をかけて言った。



「そ、そうだな」



B組の前に立っていた雄大が頷き、同じようにドアに手をかける。



C組の太一も同じようにした。



あたしは自分の鼓動がどんどん速くなっていくのを感じていた。



この先に一体なにがあるのか。



響はどこにいるのか。



あたしたちはなにをやらされているのか、全然わからないままだ。



でも、ここで立ち止まっている場合ではない。



一刻も早くこの学校から脱出したかった。



「行くぞ」



凌はそう言い、ガラッとドアを開いたのだった。



3年A組~夏美サイド~


A組の教室内は思っていた通り真っ暗だった。



月明かりが入ってこないのは、窓に暗幕が垂れ下っているからだとわかった。



光平が壁に手を伸ばして電気を付ける。



一瞬眩しさに目がくらんだ。



頭痛が蘇ってきて顔をしかめる。



しかし、それもすぐに過ぎ去って行った。



「なんだこれ……」



光平の声にしっかりと教室内を確認してみると、そこは異質な空間としか言いようがなかった。



普段、みんなが授業を聞いているのと同じはずなのに、雰囲気が重たく、呼吸をすることも苦しいくらいなのだ。



どうしてそんな雰囲気になっているのか、視界の端に写り込んだものを見てあたしは理解した。



そこには灰色の袋が転がっているのだ。



人ひとり入れるくらい大きな袋で、中でなにかが蠢いているのがわかった。



「なに……あれ……」



自分の声が情けないくらいに震えている。



袋は時々大きくゆがみ、中にあるものの形状を浮きだたせる。



それは人の両足だったり、頭部のような形状に見えた。



それを見ているだけで気分が悪くなっていく。



あの中に誰かがいることは確実だった。

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