第2話~夏海サイド~

「どうしたの?」



「あたしたち、どうしてこんなところにいるんだろう?」



その質問にあたしは左右に首を振った。



「わからない」



「あたし、家で寝てたんだよ?」



「うん。あたしも同じ」



「俺もだ」



あたしたちの会話が聞こえていたのか、隣を歩いていた長尾凌(ナガオ リョウ)が会話に入ってきた。



「気がついたらここにいた」



凌はなにかに警戒するように周囲を見つめる。



見えない魔物を睨みつけているように見えた。



「絶対におかしいよね」



優香がそう言った時、前方に昇降口が見えてきた。



下駄箱を確認してみると、全員分の靴がちゃんと揃えて入れられている。



もちろん、自分でここまで歩いてきた記憶はない。



怪訝に感じながら靴を履き替えてドアへと向かう。



梓が大きなあくびをしてドアに手をかけた時だった。



ジジッとノイズ音が聞こえてきて全員が立ちどまった。



「E組の生き残り全員そろえば外へ出ることができるようになります」



それは子供の甲高い声だった。



思わず耳をふさぎたくなるような気持ち悪い声。



「なにこれ、誰か放送室にいるの!?」



あたしは思わず声を上げていた。



みんなの表情も険しくなっている。



「ほっとこうよ」



梓はそう言い、ドアに手をかける。



ドアは意外にもすんなり開いた。



「ほら、帰るよ」



そう言って足を一歩踏み出した、次の瞬間だった。



右方向から飛んできたボウガンの矢が、梓のこめかみに突き刺さっていたのだ。



これもなにかの冗談だと思った。



誰かのイタズラだと。



でも、梓の体大きく左へとかしいだ。



手を伸ばして助ける暇もなく、どっと崩れおちる。



目の前で倒れ込んだ梓にあたしは悲鳴を上げることすらできなかった。



咄嗟に伸ばした手がその場で静止してしまう。



梓のこめかみからはゆっくりゆっくりと血があふれ出している。



「イヤア!」



悲鳴を上げて尻もちをついたのは、あたしの腕を握り締めていた優香だった。



吊られてその場に尻もちをついてしまう。



痛みを感じる余裕もなかった。



目の前で梓が死んでいる。



その事実はまるで夢の中の出来事みたいだった。



そうだ。



あたしはまだ夢を見ているのかもしれない。



だから学校内で目覚めるようなことが起こったんだ。



いわゆる夢の中ので更に夢を見ていた状態だったに違いない。



それなら、もう一度目覚めることができれば現実に戻っているはずだ。



いつもの、ベッドの上にいるはずだ。



頭の中でグルグルと思案してみてもなかなか目覚めることができなくて、この世界が現実のものに見えてくる。



「くそ、スマホがない!」



誰かが呟き、そして派手に舌打ちをするのが聞こえてきた。



その声に促されるようにしてあたしもポケットを確認した。



いつも制服のスカートに入れているスマホが、なぜかない。



焦りで背中に汗が滲んできたとき、またアナウンスが聞こえてきた。



「森谷梓さん死亡。残り13名」



無機質な子供の声に吐き気がこみ上げてくる。



今の様子を見ていて、それをアナウンスしたのだろう。



相手はどこからか自分たちを見ている。



一体、どこから?



グルリと昇降口を見回してみても、カメラらしきものは見当たらない。



きっと、巧妙に隠されているのだろう。

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