第11話 新たなる刺客
『フン、姿を変えたとしてもお前はオレには敵わない!自分のエネルギーをよく見てみろ!お前はもうほとんど立つ力もない癖に……何がお前を動かしているんだ!』
『僕の帰りを待ってくれてる人がいる……僕を信じて自分に出来る事をやっている仲間がいる……!それだけで立つ理由には十分なんだよ!』
僕とテネブルは互いに異形ながらも殴り合いを展開し、多少周りの建物を破壊しながらも一進一退の攻防に発展していた。
『立つ理由があるか……流石は光に生ける英雄様だな……だが、所詮お前は弱いままなんだよ!』
『弱くて悪かったね……弱いから強くなりたい……今この瞬間もこの気持ちに変わりはない!だから……もう一度君を打ち負かす!』
僕らの殴り合いは激しさを増し、気付けば互いに胸の水晶の光が消えかかっている程に体力を奪っていた。
『これでも……食らえやぁぁあ!』
『させない……!』
僕とテネブルは遂に最終手段として胸部に溜め込んだエネルギーを一斉に解放し、そのまま光線のぶつかり合いを起こした。
『消し飛べえええええええ!』
『おおおおおおおおおおっ!』
数分程互いに一歩も譲らぬ状態が続いた後、エネルギーが尽きた事もあってか同じタイミングで打ち消し合って強烈な爆発が起き、その衝撃でお互いがどうなったのか分からないまま勝負は終わった。
「目覚めなさい……ジェイル」
『う……あぁぁ……何だ、闇の魔将様が態々この俺をご指名とは……どういうおつもりで?』
フロンティアシティの3大遺跡の1つとして有名な御剣遺跡の最奥空洞に来ていたドゥンケルは指をパチンと鳴らしつつ、そこで眠っていた怪人を目覚めさせた。
「お目覚めの記念に準備運動はいかがかと思いましてね」
『へぇ……アンタ、闇の軍勢のクセに案外分かってるじゃないか』
「私だってただ趣味の中で闇の勢力を増幅させようとは考えてないのですよ。貴方には是非とも蘇った英雄達を葬って頂きたい」
『言われなくてもすぐにやるさ……あぁ、1つだけ忠告しておいてやるよ。俺はお前らの枠に収まるような代物じゃあない……』
そう言うと骸骨のような頭をした怪人は近くにあった剣を手にすると影の中へと入り込むようにドゥンケルの元を去った。
「痛てて……」
「ほら、じっとして……私凄く心配したのよ。いつもの事だけど急にいなくなって、かと思ったら街のほぼ中心地で瓦礫の下でボロボロのまま倒れちゃって……」
僕はあの後、紆余曲折あって一度レナさんの屋敷で治療を受ける事になった。例によってどうやって運ばれたかは僕には分からないけど、こうしてレナさんに心配をかけるのがだんだん日常的になってきている事に少しだけ負い目を感じるようにもなっていた。
「あのサイみたいな怪獣、強かった?」
「凄く……強かった。今回は僕にも譲れないものがあったから何とか押し返せたのかもしれないけど……次は多分、本当に命の保証が出来ない気がする……」
「そう……本当は私の側に居て欲しいわ……だってほら、友達でしょ?だからね、そんな簡単に傷付いてほしくは無いの」
怪我の手当をしながらもレナさんは自分の気持ちを正直に話し始めていた。僕はそれをただ聞く事しか出来なかった……レナさんを庇ったあの日から、僕の戦いは始まっているんだから。
「レナさん……ごめん、僕はもう決めたんだ。あの人達を絶対に止めるって……この力がいらないって思える日が来る……その時まで戦い続けるって」
「どうして……!?我儘なのは分かってるわ……でも、辛いの……10年前みたいに大切だった人が命を落とすなんて……もう見たくないの!」
「それは僕だって同じだよ……1000年前に守れなかった無念があるから。尚更引き返すつもりなんて無いんだよ」
僕が自分の気持ちを話すと、それを聞いたレナさんは目を少し赤くしながら大粒の涙を溢して僕のブレザーの袖をギュッと掴んだ。
「誰かの為に頑張れる人っていうのは……去年から知ってるわ。せめてこれだけは約束して……どれだけ戦ったっていい……その後には必ず、私の所に戻ってきて」
「必ず帰る……約束するよ」
そう言って僕とレナさんは指切りをした。
「じゃんじゃじゃーん!これが俺の新しい発明品、その名もプレスシューターだ!」
翌日僕達はいつものように屋上に集められると、そしてそこでまたしても和也君の発明品を見せてもらっていた。
「プレス……って事は押し潰せるのか?」
「こないだの黄色い巨人が使ったパンチからヒントを得て開発したんだ。これはコンパクトショットの為に開発したオプションパーツの第一号で、こうやって先端のジョイントにくっつけてやると……おりゃっ」
和也君の発明品を取り付けたコンパクトショットから少し大きな弾丸が発射された。
「おぉ……確かに俺様の技を元にしてるのが分かるぜ……でもよく一目見ただけでここまで再現出来たな」
「原理自体は頭に入ってたんだけど、具体的なイメージってのが難しくってさ……」
「なるほどな……にしてもコイツぁ凄ぇわ。凄えからこそ、使い所を間違えないようにしないとな」
照太君は和也君の新しい発明品に対して感心しながらもその力を見て、落ち着いた口調でこう言った。
『そうだな……力ってのは使い様だ。だが、使う奴がかなり腕の立つ奴なら力もそれに応える……そうだろ?』
僕ら4人の誰もがその気配に気付く間もなく目の前に黒いレザー調の装備を身に着けたような風貌の骸骨の剣士が現れた。
「お前は……ジェイルか!何で目覚めてやがる!」
『おいおい、そんな質問しなくったって分かってる癖に……まぁいい、誰でもいいから俺と準備運動してくれよ』
「ここは僕が行くよ……見た感じ、剣の扱いに慣れてそうだからね」
僕は何を思ったのか、一歩前に出た。
『ほぉう……いいねぇ、そうやって武器もねぇのに前に出るなんて!いいぜ、相手してやるよ』
そう言うと骸骨の剣士は首に巻いていたマフラーを伸ばすと僕ごと包み込んで何処かへ消えてしまった。
『おっと……これでも剣士の端くれだからな、挨拶の1つ位はしてやるよ。俺の名はジェイル……1000年前に数いた英雄達を軒並み殺したはぐれ者だよ』
「さっき照太君がそう呼んでたもんね……正直に言うとさっき君があんな近くにいたなんて気付かなかったよ……気配を消すのが得意なの?」
『人を殺す時にいちいち気配なんて漂わせてる方がバカだろ……俺は殺しの為ならあらゆる手を使う主義でね』
「そっか……じゃあ、そろそろ本題に入ろうか」
僕は左手のブレスレットから静かに光を放って青い剣士……ルクシアへと変身した。するとジェイルもそれに対して無言で僕と同じサイズまで巨大化した。
『剣士とは言ったが流派に縛りが無いのが取り柄でね……ちょっとばかし汚いかもしれねぇけど、大目に見ろよ……!』
『始めからそんな事を気にするつもりは無いよ……剣士なら自分の力で戦うだけで全部伝わるはずだから』
ゲンジさんの剣と違って僕に噛み付いてくるような何かを感じる……まさか、本当にあらゆる手段で命を奪ってきたっていうのか!?
『驚いてるな……いいねいいね、堪んないねぇ……俺はお前みたいな若い剣士を実力1つで簡単にねじ伏せるのが最高に興奮するんだよ……もっとお前っていう肉を俺に味わせろぉ!』
僕はジェイルの攻撃をまともに受けてしまい、胸部から白い火花を散らしながら地面に伏してしまった。
『そんなに戦うのが好きなら……もっと広い場所の方がいいだろ……場所なら用意してあげるよ!』
僕は咄嗟の判断で脳裏に蘇った記憶を元に、剣を地面に突き立ててそこから光のドームを展開した。
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