第9話 迫る影、始まりの時
「突然だけど……この中で少しでも女の子と長いこと一緒にいた事がある人ー!」
僕は今、和也君や優人君と一緒に登校していたけど、いきなり和也君はそんな事を言い出した。
「……はい」
「当然だよな!だってお前、学級委員だもんな!望海さんと何時でもイチャつき放題だもんな!」
自分で質問投げておいて自分で嘆いてるし……
「あのね、僕はレ……望海さんとはただの同じ委員会の仲間で、友達としか思ってないから」
少なくとも僕はそう思う……けど、レナさんは逆に僕の事どう思ってるのかな……?
「かーっ、クラスどころか学年1の美少女がお前に惚れてるかもしれないって思うと何かこう、あれだ……無性にムズムズするぅ!」
しばらく一緒に登校しなかった間に何が起きたんだよ。
「んな事は置いといて……最近やけに怪獣とか怪人騒ぎが頻発するようになったよな。まぁ、その都度青い巨人とか黄色いムキムキマンとかが退治してくれるけどさ」
「でも、それに合わせて光瑠君の姿が校内から消える時も増えたよね。もしかして怪獣とかをより近くで感じる為に現場に向かってたりするの?」
うっ……地味に鋭い所を突いてきたな。確かに怪獣騒ぎとかになったら僕は学校を飛び出してはいるけど、それが街を救う為だなんて口が裂けても言えないよ!
「えっと……あー……あはは」
「お前……はぐらかしてんじゃねぇぞ!」
「わっ、ちょ、やめて……あははは」
「やはり、私達の力だけで用意した怪人や怪獣では英雄達に対抗するのは難しいようですね」
『何で昔より強くなってやがるんだよ、アイツらはぁ!だが、次に戦う時は確実にぶっ倒』
「いっその事、この街の人間を使うってのはどう?そもそも光と闇を生み出したのは人間なんだから……心がある彼等を依り代にすれば、より高度な怪獣が生み出せるよ」
ルクシアへの復讐という念に駆られ続けて叫び散らすテネブルを遮るように言葉を発したのは薄い金髪の少年オスクリタだった。
「なるほど……一理ありますね。では、早速街へ赴き、私達の新たなる同胞を募るとしましょうか」
「えぇっ、照太って1000歳超えてんの!?」
「おう!今年で1018歳なんだよ、アミーゴ」
昼放課は食堂で照太君も含めた4人で昼食を取る事にした。こうして近くで見ても分かるけど、凄く大きいな……照太君って。
「なぁ照太、あの怪獣や怪人って1000年前にもいたのか?」
「あぁ……今の比じゃない程にな。俺様やアミーゴ達の全戦力を以てしても犠牲を払わなきゃ助かるものも助からなかった位だ……だが、今回の怪獣達はあの時と違う点がある」
「その違いって?」
「短いスパンで出てくる数が何時だって単体だった……そして俺様達の手の内を何としても見ようとする節を感じた。恐らく奴らは1000年前の失敗から学習し、俺様達をより確実に仕留めれるように土台を組んでるのかもしれねぇ」
当然といえば当然だよ……失敗から学んだ事程心強いものは無いからね。もし照太君の話が本当だとしたら……いつかは僕らでも勝てない相手が出てくる事だってあり得るよね。
「ん……防衛省の緊急会見?見てみようよ」
『私は、フロンティアシティ防衛省の長官である風吹
優人君のスマホの画面越しに姿を見せたのは優人のお父さんだった。しかもその服装はよくあるスーツでは無く、何処か軍の制服だった。
「あれ、これもしかしなくてもアミーゴの親父か?」
「うん……でも、何で?」
「すぐに答えてくれるよ」
『我々は連日起きている未知の生物が引き起こす事件を受けて、この度対策本部を設立する事を決定しました。我々は怪獣を倒してくれた巨人達と直接話をし、共闘戦線を張ると共により強力な兵器の研究·開発を進めていく事をここに宣言します!』
え……どさくさに紛れて今、巨人と協力するとか話をするって言わなかった!?
「おぉう、俺様に話をしたいか……へへっ、スカウトなら何時でも歓迎だ!」
照太君が何だかノリノリだ……
『それでは、以上をもちまして本日の我々の発表は終了します。皆様の安全は我々が保証します!』
「お待ちしておりました、優人様。そしてその学友の皆様」
僕と照太君は放課後、優人君の家……というか豪邸に呼ばれ、そこで信治郎さんの話を聞く事になった。
「まず、君達に謝りたい事がある。公の場で遠回しとはいえ、君達の事を話してしまった……」
「い、いえ……気にしないで下さいよ」
「そうそう、長官殿も大変だろうからな。それで、俺様達巨人組に何の話だ?」
「君達のお陰で連日の犠牲者が0という事はこちらで確認している。今更かもしれんが、今一度我々に手を貸してはくれないか?」
信治郎さんはそう言うと僕らに向かって深々と頭を下げてきた。
「そんな……僕らは自分達の意思で戦ってきたんです。それに僕らだけの力にも限界はあると思いますから……」
「光の英雄だなんて言われてるが、これでも俺様たちは目覚めて間もないからな。その協力の申し出、素直に引き受けさせてもらうよ」
「そうか……では、君の戦いをサポートしてくれる仲間を早速紹介しよう」
信治郎さんの紹介の後に部屋に入ってきたのはなんと、優人君と和也君だった。
「アミーゴ達、何で!?」
「ずっと黙っててごめんね……けど、こういう事だからよろしくね」
「ちなみに俺は色んなメカを作ってサポートに回るから、そこんとこよろしく!」
「こちらこそ……改めてよろしく!」
「さて、君達4人はこれでチームになった訳だが……普段は学業に専念してもらう。君達はまだ学生だからね……だが、有事の時は私から指示を出す。皆、頼んだぞ」
「了解!」
信治郎さんからの話の後、僕らはカラオケボックスを一部屋借りて早速作戦会議的な事をした。
「まず、照太……お前の変身に使うそのブレスレットを貸してくれ。大丈夫、変な細工はしないからさ」
「おう、アミーゴの頼みなら貸してやろう。だが、防衛省は一体どんな兵器を用いるのやら……」
「確かに……怪獣を倒すだけならいいんだけど、これがもし世界戦争に発展するような危険な物が作られるなんて決まったら……」
「今以上に皆に危険が及ぶよね……でも、そうさせないように僕らが頑張るしかないよ」
というか今思ったけど……僕の正体ってもうこの2人にはバレてるのかな?
「しっかしあの青い剣士は誰が変身してるんだろうな……黄色いマッチョマンは照太が変身してるとして……うーん」
「あの戦いぶりからすると、多分照太君みたいに人間の姿は学生とかじゃないかな」
この様子だとさっき信治郎さんは和也君達に僕の正体について話してないのかな……
「あの青い剣士については俺様が調べておいてやるから、今は……いつでも動けるように各自体を休めようぜ」
照太君のその一言を最後に今日の作戦会議は終わり、それぞれ帰宅して体を休める事になった。
「こうなった以上、僕の正体があの2人にバレるのは時間の問題だ。けど、バレたからって関係が変わったりなんてしない……」
僕は改めて自分が英雄である事、そしてそれに対する色んな感情を感じながらも落ち着かせるとゆっくりと目を閉じて眠った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます