第6話 ハロー、アミーゴ!
「えーっと……待ち合わせはここでいいのかな」
突然だけど質問です。最近仲良くなった女の子と待ち合わせして一緒に学校に行こうと言われました。果たしてこの後何か起きると期待してもいいんですか……?
なーんて思いながら、僕は第一区とスクールのある二区の間にあるカフェの前で待ちぼうけているのである。
「おはよう、春野君。ごめんなさいね、急にこんな真似をして」
「え、あっ……おはよう、レナさん」
「もうすぐ新学期が始まって10日経つけど……そろそろ委員会とか考えないとなって思ってるのだけど、春野君は何か考えてたりする?」
「僕は……特に考えてないかな。放課後に残ったりしなきゃいけないし、部活が出来なくなるのは何だかなって」
「私はね、学級委員になろうと思うの。私、小さい頃から皆を引っ張る事が好きなので……そうだ、春野君も一緒にやりませんか?」
レナさんは何故か目をキラキラと輝かせながら僕に迫ってきた。
「えっ……ぼ、僕が!?」
「はい、という訳で委員会役員を決める前にうちのクラスに転入生が来たので紹介します。えーと……」
「先生のお口を借りずとも自己紹介しよう。俺様の名前は
あれ……この話し方、何処かで聞き覚えがあるような……?
「ん……おぉっ、誰かと思えばアミーゴじゃねぇか!あはっ、先生!席はアミーゴの横でいいよな!」
「えぇ、いいですよ」
「ヒャッホゥ!よろしく頼むぜ、アミーゴ!」
うん、やっぱり人違いじゃなかった……あの時僕を助けてくれた人だ。
「えっと……僕は光瑠って言うんだ。よろしくね、照太君」
「おう、こっちこそよろしくな!」
その後も授業が淡々と進んでいくばかりで特に変わった事は何も起こらなかった。
「こうして現代に蘇ってみたけど……だいぶ闇の連中は動き出してたみたいだな。ここ数日だけでも既に魔将の1人が攻めてきた……こうなった今、俺様たちは何があっても人間達を守らなきゃならない。つまり、俺とアミーゴで奴らと戦わないといけない……今はこうして学生でいられるかもしれないが、そのうちそうもいられなくなるかもしれない。今のうちに覚悟を決めておけよ、アミーゴ」
昼放課になった時、僕は照太君に呼ばれて屋上に来て、そこで彼と会話していた。
「僕は初めて人を助けた時……この力を得たんだ。その時、思ったんだ……僕が得た力は僕の日常を変えるかもしれない。でも、それで人間関係まで変わる事は無いってそう感じたんだ」
「そうか……変わったな、アミーゴ。昔のお前は力に少し怯えながら戦ってた……その顔を見て分かるよ、俺様が聞かずとも覚悟は出来てたんだな」
「そう、芹澤君とそんな事を話してたのね。てっきり喧嘩かと思ったわ」
「喧嘩なんて、そんな……それより、改めて思うんだけど……本当に僕なんかが学級委員でいいの?」
「もう決まった事をいちいち言わないの!基本的な事は私がやるから、サポートをよろしくね」
「わ、分かった……危ないっ!」
僕は何かの気配を感じたのか、咄嗟にレナさんの手を引いて攻撃を回避した。
『ふむ……この距離から拙者の攻撃を見切るとは。人間の中にも戦士の魂を持つ者がいたとなれば……殺すまで!』
僕の目の前に現れた忍者は紫のエネルギーを放って巨大化した。
「レナさんは近くの公園に……ここは僕が何とかするから!」
僕はレナさんが公園の方へ向かったのを見届けると、左手のブレスレットを掲げて青き剣士に変身した。
『拙者の名はゲンジ、フォールンに仕える闇忍にして……暗殺を生業とする者故、お見知り置き願おうか!』
『忍者って事は……この前の姿で戦うのは危険だね……うわっ!』
『力に特化した姿にならないという判断は正しいようだが、拙者の剣の速さまでは計りきれないようだな!』
相手は剣に重さがない分速さで勝負って訳か……だったら見極めればいいだけの事!
『ムッ……拙者に食い付いてくるか……!天武の才もここまで来ると少々認めれんな』
僕とゲンジはほぼ互角の勝負を繰り広げていた。これまでの戦いとは違って街への被害は少なかったけど、これまでの比にならない程疲労は溜まっていった。
『ふぅ……やはりお主とはこの姿で戦うには惜しいか。では、我が奥義で相手をしよう……変化抜刀·
僕から2、3歩程下がったゲンジは一度小太刀を鞘に納めると怪しげな式句と共にその姿を更に巨大な蝦蟇蛙に変化させた。
「俺様最高、俺様最強……ん、何だあれ……呑気に歌ってる場合じゃねぇ!」
アイツは確か……アミーゴ、無事でいてくれよ……!
『何だよコイツ……急に姿が変わったと思ったら動きまでガラッと変えてくるなんて……!』
僕は目の前で街の建物を足場に次から次へと居場所を切り替え続けるゲンジの攻撃に手こずっていた。
『食らうが良い……大蛙秘技·乱れ爆雨!』
『うわぁぁあっ……!前が見えない……!』
ゲンジの腹部から放たれたおたまじゃくし型のミサイルは何発かは剣で斬れたものの、そもそもの数が多い上際限無く打ち込まれる為、腕の振りが遅くなった所に数発命中した辺りから次第に膝を付くまでに追い込まれた。
『はぁ……はぁ……!ミサイルの質量によるダメージと爆発のダメージでまともに立つ事が……出来ない……!』
『如何かな、拙者の忍術は……皮膚に傷を付けようにも弾性の高いこの体に剣は無意味、更に腹部から放つ爆弾……これが拙者の実力である!』
ぐ……!確かにゲンジの言う通り彼は凄く強い……だけど、僕だってまだまだ負ける訳にはいかないんだ!
『待たせたな、アミーゴ!ここからは俺様に任せろ!』
エネルギーが尽きかけていた僕を庇うように姿を現したのは黄色い装飾が目を引く筋肉質な巨人だった。
『その声……まさか、照太君!?』
『へへっ、確かに俺様は照太って名乗りはしたけど、この姿の時はルウシアって言うからそこん所はよろしく頼むぜ!』
『う、うん……あ、えっと……ありがとう!』
『いいって事よ……さ、アミーゴを痛め付けてくれた礼はしっかり変えさせてもらうぜ、フロッグ忍者!』
照太君……ルウシアはそう言うと一歩前に出て構えるとそのままいきなりゲンジを殴り飛ばした。
『馬鹿な……拙者の体はあらゆる攻撃を跳ね返すはずだ……こんな事があるはずが無い……!』
『俺様の拳はそこいらの戦士のそれとは訳が違うんでね……食らえば確実にダメージを負うんだよ!』
ルウシアの追い打ちで放った左フックは先程よりも更に遠くに吹き飛ばし、相手をすっかり満身創痍までに追い込んでしまった。
『もう少しでドゥンケル様の彼岸が達成出来たというのに……!』
『俺様の拳は暗雲を穿ち、悪を砕く!唸れやぁ……ルウシウム……フィストォッ!』
ルウシアが両方の掌を組んで前に突き出すと同時に圧縮された光のエネルギーが真っ直ぐゲンジの左胸を貫き、程無くして爆散させた。
「ありがとう、照太君が来てなかったら危なかったよ」
「なぁに……気にする事無いさ、これ位。俺様とお前は互いにアミーゴなんだ、助け合ってナンボだろ?」
「あはは……そうかも」
夕焼けに染まる空を見ながら僕ら2人は一区切り付いた事にホッとしながら笑い合うのだった。
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