第1話 白玉の陰謀 (8)
おじいちゃんが入ってくるやいなや、テロリストたちは訝しげにポニコに視線を送りました。
「まいったな……」
リーダーは顔を苦くするばかりです。
「おい、なんだあのジジイは、母親はどうした?」
「あれえ、おっかしいなあ、忙しかったのかなあ?」
下っぱのテロリストの追及に、ポニコはすっとぼけて応戦しました。ここまでくれば、あとは全力でガキになるのみ、です。
「あ、でも、あの袋にはたくさん白玉が入ってるよ!」
いくらテロリストが顔を近づけても、ポニコはニッコリするだけです。おじいちゃんとやっている精神統一の修業の賜物でした。テロリストのリーダーはしばらくおじいちゃんを見つめていましたが、ややあって、彼は顎で下っぱに指示をだしました。下っぱのテロリストはうなずくと、ライフルを向けながらおじいちゃんに近づきます。
「孫は無事なんだろうな?」
「無駄口を叩くな。いいから、そいつをよこせ」
二人はしばらく睨み合っていましたが、おじいちゃんは大きな麻袋を下っぱのテロリストにわたしました。麻袋を受け取ると、彼はそっと後ずさり、ライフルを向けたまま仲間にわたしました。
別の下っぱが袋を開け、リーダーが中を覗きました。まちがいありません。確かに、中には丸いものがぎっしりと詰まっていました。テロリストたちが満足げにうなずいて、顔を上げた、直後でした。
ポニコは持っていたアクセサリーを麻袋めがけて投げつけました。
小型爆弾はまたたく間に爆発しました。その衝撃で、麻袋に入っていたものが、近くにいたテロリストたちに向かって弾き飛びます。テロリストたちは、爆弾の衝撃と丸いものの応酬にたちまち倒されてしまいました。
「みんな! 逃げるよ!」
叫ぶと、ポニコは飛び散った丸いものに体重をあずけ、そのまま滑って出口まで加速しました。エマたち人質は一瞬、戸惑いを隠せないでいました。が、これが好機であるとすぐに察すると、ポニコの動きをまねるようにして、体を滑らせました。すごい! ぐんぐん加速します。これならば、手足が不自由でも移動が可能です。
「こ、こいつは……」
床に伏していたテロリストのリーダーは、頭を抱えながら散らばっているものを一つ摘まみあげました。それは、白玉にしては明らかに固い、
「ビーズ……」
袋の近くにいたためか、テロリストたちのほとんどが爆弾とビーズの弾丸の餌食にあい、気を失っていました。わずかに残った仲間も、ビーズに足を取られてすっ転んでしまう始末です。それだけではありません。
「突撃ぃぃぃぃ!」
合図と共に、武装した警察が店になだれこんできました。
「これ以上、市民様から無能扱いされてたまるかってんだ! 責任はすべて俺が持つ! 勇敢な子どもと老人が作ったチャンスを逃すな!」
ブルさんは高らかに宣言しました。
警察たちは華麗にビーズの上を滑り、人質の救出、テロリストの確保を迅速におこないました。ものの二、三分のことです。あっさりと、事件は終息をむかえたのでした。
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