理解と解釈―第四章ー
Observed ending
かーっ。歩けど進めど闇は闇。
「ここ、先、天国が観測した結末」
結末だって。ああ、そういえば俺が【No.1224】を読んだのは最後の方だけだもんな。しかし、ロン毛の野郎。なんでそんなこと知ってるんだ。俺は頭のなかが熱くなってくる。自分の髪の毛をくしゃくしゃにいじくりまわす。すると、レンゴクはさっきの機械のような口調はどこに行ったのやら、なめらかな口調で言葉を紡ぐ。
「余白や行間は文字の隙間をぬってつながっている。天国が結末の行間に落ちてきたとき、空色の光が見えた。きっと、誰かに共鳴したんだろうと俺は思った。あなたは結末のどこに『共鳴』したの」
「そんなことあんたには関係ないだろ」
「関係はある。行間の闇からあなたを出して、俺の願いを叶えてほしいから」
……は。今なんて言った。『俺の、願い』だぁ。こいつ、一体何者なんだ。【No.1224】には挿絵などはない。登場人物の容姿については想像するしかないのだ。そうすると、こいつは
「俺は、天田うしおの最後の台詞に共感した。いや、俺と似た人間を見つけてしまって同情したんだ。救いたいと思ってしまったんだよ。なあ、レンゴクよお。オメーは一体何者なんだ。天田うしおか、園田啓か、はたまた別の人物か」
ちょっとだけ、あいつは黙った。でもほんの少しの空白をすぐに歌うように埋めていった。
「俺は俺。自分が何者かわからない。ただ、行間に迷い込んだあなたとツユクサの願いを叶えたいだけの存在」
「俺の願い……そんなものはねえぞ」
「この闇ではあなたの気持ちはだだもれ。さっき、【No.1224】にイシを放出していたから、過去もあらかたわかった。ついでにさっきから脳内でおしゃべりしてるのを聞いてた」
なんて野郎だ。俺の脳内ボイスを聞くだなんて破廉恥な野郎だ。全く。
「じゃあ、アンタとツユクサの願いってのは」
レンゴクは俺の腕を痛いほど掴んでいる。真っ赤な艶のない髪と生気のない瞳にほんの少し「生」の色がまざる。
「俺の願いはツユクサが思う形で物語を終わらせること。ツユクサの願いは、けいとうしおのイシの浄化」
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