間一髪
あ、あ、危なかった……。あと一歩で三日月が喰われるところだった。
開いていたページに蛍のような光を放つ三日月の象徴紋が浮かび上がる。三日月の象徴紋は
ひとまず難は去った。このまま全て見ていたいが、あまり干渉しすぎるのも、邪魔になるからな。オレはオレのなすべきことをしよう。引き出しから折り畳み式のブックスタンドを出すと【No.1224】をそこに置いて、握っていた三日月の石の欠片をハンカチに戻す。目の前にある【No.1224】の複写物と各館からの報告書の山。どっちが優先か。報告書の山は少し読んだが、病んだ潜本士の証言やらが多くて今のところそれほど目新しい情報は入ってこない。つまり、複写物を先に片付けた方がいい。オレは【No.1224】の複写物を手に取って、目次をもう一度確認する。二部・四章と結構長い。三日月が精神接続する前に少しだけ読んだが最初の方は冗長な風景描写が多く、園田啓なる人物は出てこなかった。この物語は天田うしおの頭上にカメラがついているように書かれている。完全に彼女の目線かと思えば、そうではない。天田うしおの感情描写がなされていないのだ。
―うしおは最初に入ったグループに馴染めなかった。独りで行動していたうしおはやがて一部の女子から徐々にハブられていった。数学の授業、席は決まっていなかった。うしおは後ろの方に座る。桜の木はもうすでに緑が葺いていた。ふと隣の机を見ると、黒いワイシャツを着た男の子が座っていた。
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