四季奏爛 天は怒り、人々に恵みと罰を与える夏の夜

 雷雲が空を覆い、段々と雨足が強まり雷鳴が近付く夜に僕たちはいつものように並んで座りながらゲームをしていた。稲妻が一瞬だけ部屋を照らし、さっきよりも近くなった雷鳴に僕は、恋愛小説でよく見る状況だと感じてコントローラを置いて彼女の方へ身体を向けた

「雷怖いとか無いの?」

 そう聞くと、彼女は持っていた赤いコントローラを脇に置いて、呆れた表情で首を振った

「そんなアニメや小説みたいなことあるわけないじゃない。雷だってジェットコースターも、お化け屋敷だって大丈夫よ。外で『キャー怖い』なんてやっている奴らはただ可愛いとか、守られる私ステキって思ってもらいたいだけよ。」

 幻想を持ちすぎよと彼女は微笑んだ。たしかに女の子に対して幻想を持ちすぎていたかもしれない、そう納得したその時家の近くに稲妻が落ち、雷鳴が地鳴りのように響いた。

「キャッ!!」

 彼女は飛びはねて抱きついてきた。胸の中で小さく震えるその姿が庇護欲を掻き立てて、とても可愛く見えた。大丈夫?と頭を撫でると、彼女は身体の震えを止めてしてやったり顔で顔を上げた。

「ほら可愛く見えたでしょ?」

 そうしてテレビの明かりが映す彼女の顔はいたずら好きな天使のように可憐に笑っていて、僕はその可愛らしさに堪らず目を背けたのであった。

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四季奏爛 ~四季の移ろいの中、二人は恋をする~ ケイくんとナナさん或いは義鷹=gsgs @gsgs3412

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