第2話 始まりの悲劇2

夜遅い時間、何時もはしない妙な物音が家に響いた。


「なんなのかしら、この音」


 何者かが家の中に侵入してきたのだ。


「見てくる。マーベラ、二人を頼んだ」




 不安になったデルタは愛刀を持って玄関へと向かった。


 家族に危険が迫っている。


 そんな気がした。そしてその予感が的中した。


 家の中に武装した謎の集団が入ってきたのだ。




「なんだお前たちは」


 剣を持ってデルタに襲いかかる男たち。


 長年の戦歴の経験を持ったデルタは攻撃を交わし反撃をする。


 襲ってきた男たちとデルタの強さの違いは圧倒的だった。




 だけど敵は30人以上はいる。


 いくらデルタの方が強くても狭い家に数の利を生かした攻撃を耐えしのぐのは至難の技。


 突破されるのは時間の問題だった。




 後退しリビング戻ってくるデルタ。


「なんなのその人たち」


「知らねぇ。俺たちを殺しに来たようだ」


 家の中は侵入してきた男たちの血がリビングまで広がっている。




 そして目の前で見知らぬ人間とはいえど、死体が増えてくい現状。


 命の争いをするところを始めてみた双子の子供たちは軽い悲鳴をあげ酷く怯えた様子だった。




「おいマーベラ、窓から子供たちを頼んだぞ」


「デルタ、死なないでね」


 マーベラは息子たちを抱えて窓から外へ飛び出した。


 森の中を子供たちの手を取り必死に走る。




「ねぇ、母さん。父さん置いていくの」


「あんな数1人で相手していたら父上が死んじゃうよ」


「大丈夫。お父さんは簡単に死なないわよ。強いんだから」




 そうは言ってもマーベラだって内心では心配していた。


 だけど引き返したところでどうしようもない。


 家族を守りながら戦うことは重い荷を背負って戦うのと同じくらい邪魔になる。




 それに巻き沿いで大事な息子に危害が起きるかもしれない。


 ならば妻と子供たちだけでも逃がすことが当然の判断だろう。




 数秒後、ガランとグルズの住んでいた家は崩れる大きな音を立て火を放ち激しく燃え初めた。


「嘘だろ」


 振り返った景色に3人は呆然としてしまう。


「あなた。無事なのよね」




「おい、いたぞ」


「どうやら息子が二人もいるようだ」


「あれは悪魔の子だ。3人とも捕まえて殺せ」


 追手が3人にも迫り、必死に逃げ初めた。


 しかも何も悪いことをしていない8歳の子供であるガランとグルズも命を狙われている。




 追手達は馬を使っているのに対してマーベラ達3人は自らの足で逃げている。


 故に捕まるのも時間の問題だった。


「二人とも目をつぶって、こっちを見ては駄目よ」




 マーベラは2人の手を離して後ろを振り替え手をかざした。


「これでもくらいなさい」


 手のひらから光の球体を生成し、それを目の前の地面に叩きつけた。




 ちょっとした目眩まし程度の魔法で、辺りの暗い夜道にしか使えないが、これを突然やられたら回避不可能だ。


 光は敵の騎士の目に直視し、行動を一時的にだが止めた。




「く、目眩ましか」


「目が、クソが」


 馬から落ちたものもいて、それが道をふさいでしまい、多少だが逃げる時間を確保できた。




「二人とも急いで」


 再びマーベラは子供達の手を取って逃げる。


 追手を引き離すことが出来たが、再び迫ってくるのは分かっていて、こんなことを繰り返してもいずれは捕まってしまう。




 だからマーベラはある決意をした。


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