第2話 謝罪のオレンジジュース

あれから、1週間。

僕と浅海さんとの奇妙な行動はつづいている。

学校内では、僕と直也と浅海さん3人で話をしたり、昼飯を食べたり。

帰りは直也が野球部の練習でいなければ2人で帰る。

それが日常化しつつあるのだ。


そして2人で帰る時、いくつかの質問をする。

「浅海さん、なんであの時空飛んでいたの?」

「あー、あれね。本当にちょっと急いでいたのよ。滅多に空飛ぶ魔法は使わないんだけどあの日はどうしてもね」

「僕みたいに、誰かにみられなかったの?」

「うん、見られたら記憶消していたから。でも記憶を消すのも疲れるからあの日はもう走って帰っちゃった」

ああ、だからあの時空飛ばなかったんだ・・・

「そんなに疲れるんだ、魔法使いもたいへんだなぁ」

「そうね、RPGでいうMP(マジックポイント)みたいな物は無いけど使いすぎると動けなくなるし、絶対に無理をしない様に言われているから」

すると、浅海さんは辺りを見渡して、突然に

「ユウト、手・・・繋いでくれるかな?」

僕は動揺する、え?なんで急に?!

僕が戸惑っていると浅海さんの方から手を繋いで・・いや、掴んできた。

「じっとしてて!」

浅海さんが目を閉じると下から風が吹いてくるのを感じた地面には何も無いのに。

すると、浅海さんの身体が浮き始めた。空を飛ぼうとしているのか?

けれども僕は全く動かないので風船をを持つような感じで浅海さんが浮いている状態になる。

「ユ、ユウト!絶対にこっち見ないで!」

浅海さんが素早くストンと地面に足を付ける。顔が真っ赤だ。何があったんだろう?

なにか言いたそうだったけど、咳ばらいをすると、普通の話し方に戻る。

「やっぱり、ユウトには魔法が効かないのかな・・・」

「どういう事?」

「本当ならね、手を繋いだ人と一緒に空を飛べるの。私の魔力は強い方だから」

「記憶が消えなかったと同じように、空を飛べないって事か」

「そうね、でもこれで別の魔法使いが来て攻撃魔法を使ってもユウトは安全って事ね」

「いやいや!なんで攻撃されなきゃいけないの?!そもそも他にも魔法使いっているの?」

「いるわよ、うちの高校にもあと2~3人居るんじゃないかな?」

「居るんだ・・・」

「でも『記憶消去』の魔法を使える人は少ないから人が見えるところで使う人はいないと思うわよ。バレたら大変だもの」


そんな次の日の放課後、ゴミを出しに焼却炉へと向かう。

前に居るのは制服のリボンから下級生である1年女子が重そうに一人でゴミ箱を持っている。手伝おうと声をかけようとした時、少女はゴミ箱を置き人差し指を立てるとゴミ箱を指さす、するとゴミ箱が・・・浮いた・・・

おいおい、簡単に魔法使っちゃってるじゃないか・・・

「ねえ君!」

僕は声をかける、少女はビックリして浮いていたゴミ箱がガシャンと落ちる。

「あの、見ちゃいました?」

「うん、見た」

「なんでそんなに落ち着いているんですか?この不思議現象を前にして」

すると少女は、

「ちょっと待っててくれますか?会わせたい人がいるんです。絶対に動かないで下さい」

「浅海さんを呼んでも僕の記憶は消えないよ」

すると、少女は目を丸くして、

「え?えっ?香織先輩の事知ってるんですか?それと先輩が魔法使いって事も?」

「うん、知ってる」

「それなら、誰か知らないですけど消えてもらうしか・・・」

少女は右手から氷の塊を作っていた、いやいやヤバいだろそれ!

「待って!今僕は『監視対象』だから!」

すると、少女は氷の塊を消して、

「あれ?するとあなたは吉岡先輩ですか?」

「そうだけど・・・」

「初めまして、私は沖真由美(おき まゆみ)です。お察しの通り魔法使いです」

「うん、わかるよ。それよりもダメじゃないか?魔法をそんな簡単に見えるところで使ったら。他の人が見てたらどうするの?大変な事になっちゃうんでしょ?」

「お、重かったから、周りを気にしてなくてごめんなさい・・・」

初対面で人を𠮟るのは初めてだ。なぜ𠮟ったかわからない。泣きそうな沖さんを見て可哀そうになってオレンジジュースを奢ったのはまた別の話。

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