番外編:意思伝達のアレ
またまた番外編となります。表題の通り、意思伝達についての話を考察したいと思います。まず、軍隊のアレを書いていて気づいたのですが、先に意思伝達について書いとかないとアレ出来ないなとおもいましたので、先にこちらを書かなければと謎の焦燥感が出てきたので急遽考察してみました。
この話で取り扱う意思伝達は、組織内やコミュニティでの決まった言い回し、言葉遣いや専門的な用語、符丁、礼儀作法、仕草などが何故に使われるのかというお話です。結論的には、同じ言葉遣いや礼儀作法は以前でも取り上げましたが同じコミュニティに属する最低限の証明要素でして、用語や符丁、仕草は取り扱う事象や事物を一元化して、意思伝達の簡略化と誤解を生じさせないようにする為に定めたモノです。知らない人にはチンプンカンプンだけど、知っている人同士では話が通じた上に手短に済むという事です。
さて、なぜ軍隊のアレよりも先に意思伝達の方になったかと申しますと、それは、「敬称のアレ」とも通じますが、礼儀や言葉遣い、仕草、専門用語、符丁などは同じ業界にいる仲間ですよ、という最低限の免許証で、意思伝達を潤滑に図るために必要なのは何故かというのを、おぢさんは無駄に考察してしまいました。
特に国が広いと方言などがあり、組織内で使う標準的な言葉遣いや用語を統一しておかないと意思伝達に大変苦労してしまいます。旧日本陸軍が長州の偉い人が初期のトップだったこともあり、例の「~であります」という長州弁で言葉遣いが統一されたというのは、割と有名なお話ですよね(え、そんなに有名じゃない?)。
物理や数学で言うところの公式とか定理とかいうやつと同じです。何かの事象を議論する際に共通に定められた形で会話しないと、噛み合わないどころか勝手な解釈をして、最悪命の危険もあるので、軍隊に限らず研究や生産、工事の現場ではできるだけおなじ言葉遣いで、専門用語だったり符丁と言われる解釈の可能性の少ない言葉を用いて意思の疎通を図っています。あと、符丁には、無線傍受されていても盗み聞ぎしている方にはわからないようにする意味もあります。よく、軍事物の映画で、軍用機と管制の間の通信シーンなどで観ますね。
特に軍隊では、指揮官の命令を勝手に解釈して行動すると、局地的な戦場どころか、その方面ましてや国の存在も危ぶまれかねません。指揮官の命令を、無視したり、作戦目標や戦術目標に反する行動をしたり、勝手に解釈したりされたら、戦争なんてできません。大げさだとお思いでしょうが昔の偉い人(ニキータ・フルシチョフ)はこういっております。
「戦争は小銃の偶発から始めることができる。しかし戦争を終結させることは、経験豊かな国家指導者でさえ容易な事ではない。」
例えば、些細な領土問題(例:国境線の曖昧な砂漠地帯で一応は自国側領域で有用な資源が発見されたなど)でやや緊張が高まっている国同士が、とりあえずお互い相手に出し抜かれないように、問題の国境地域に大隊程度の部隊を置いて警備を増強したとします(何しろ実効支配というのは現代でも実に有効に働いています)。その際に、パトロールに向かう分隊の新兵が、周りから「発砲するなよ、発砲するなよ」を振りだと思って・・・、いやいや違う違う、そうじゃなくて。指揮官が「交戦しないように」と命令した場合に、下の人間は「交戦」はしないけど「威嚇で発砲」はOKと受け取ってしまったらどうなるでしょう。多分、戦争が始まってしまうでしょう。ですので、軍隊ではROE(交戦規定)といって任務に就く際に、自分の判断でやって良い事と、上官のもしくは上級司令部の許可なく行ってはいけないことを明確に規定したものを意思伝達します。基本は以下の4項目であとはいろいろオプションとなります。
①武器を使用してもよい時
②武器を使用してもよい場所
③武器を使用してもよい相手
④使用するべき武器の種類
この場合は、侵入不可の緩衝地帯をおそらく設定して不意の鉢合わせが無いようにしているはずですが、相手方のパトロールが明らかに緩衝地帯に侵入してきたら、音声などで警告して追い払うというのが現場で許される行動で、それに従わない場合に司令部に連絡して発砲許可を貰ってから、相手にこれ以上来ると発砲すると警告する。などの段階を踏むことになります。ちなみに現代の軍隊では前線の兵にはウェアラブルなカメラなどがヘルメット等に装備されていて、デジタル通信で師団司令部等にリアルタイム配信されているとかいないとか。なので、きちんと段階踏んでいるけど向こうが突っ込んできて交戦意思ありましたよ、と言う証拠を記録して、相手側に証拠の捏造をさせないとかやってから交戦します。
ウクライナ侵攻では露西亜が先に撃たれたのオレオレというオレオレ詐欺をするぞって、米国が世界中に発信しまくっていたので、露西亜はその手が使えませんでした。多分、衛星やステルス無人機とかで視ているぞと、防犯ステッカーを張りまくって牽制していたんだろうなと思います。
閑話休題、しかし、意思伝達について仕組みを一所懸命に整えても運用する側がどうしようもないと、画餅に終わります。それは、運用対象にしっかりと教育訓練をして、かつ、賞罰をキッチリ行う仕組みを作るという運用面での枠組みが不可欠であるという事です。
その一つ、教育訓練ではよく映画などで見られる、米軍の新兵訓練のシーンです。あれです、「お前たちに許される返事は、Yesだけだ分かったか!」、「サー、イエッサー!」、お馴染みのやつです。これ、軍隊で、上官の指揮命令に疑問を持たせずに行動を起こすよう訓練しています。何故なら、実際に戦場に行った際にもたもたしていると死んでしまいます。だから、悠長に兵に判断を任せられない場面では上官の命令に即座に反応するように訓練しているのです。この訓練シーンが、非人間的に見えるのは「考える葦」から「歯車」に改造しているからです。でもでもだって、前線で一人欠けるとその穴埋めは大変だから、死なないようにしないとぉ(はっ、しまった、何かに乗っ取られた)。
賞罰の必要性は言わずもがなでしょうが、「信賞必罰は武門のよって立つ所」と銀河帝国皇帝も仰っております。なので、命令を無視して戦果を挙げたとしても、処罰の分は差し引かれての評価になります。処罰の方が功績よりも大きいと「泣いて馬謖を斬る」になります。結果が良くても過程がアレだと考課表に一言書かれてしまうのは、人事評価制度の基本的なお話です。結果さえ出せば親を殺しても良いなどとやっていると、指揮中に後ろから撃たれますので、皆さん気を付けましょう(何を?)。
話は変わりますが、我らが中世ヨーロッパ風異世界でも、貴族や主人の許しもなくあれこれ言ったりするお供の従者とか騎士は、お家を潰す要因になりかねないので心得として無駄口を叩くな(沈黙は金)としっかり躾されるはずです。だもんで、よくある主人のいないところで看板掲げて突っかかってくるのは、やらかしではなく主人から命令(意思伝達)を受けて代行していると普通に受け取れるはずなのに、その場の突っかかってきた奴だけにしか制裁しないのが不思議です。「よろしい、ならば戦争だ」じゃないんでしょうか、人外な主人公さん。
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