軍隊のアレ(その1)
さて、中世ヨーロッパ風の異世界で、度々、戦争や紛争が行われます。封建社会の軍隊は一体どの様な制度だったのでしょうか。ここでお断りなのですが、軍組織の話は非常に長くなると思いますので今回はその1となります。二台連結のトレーラーの後部に「全長18m、気合い入れて追い越せよ」と書いてある感じです。
ここで、話はそれますが、民主制の古代ギリシア(紀元前8世紀でポリスの頃)や古代ローマでは、ある意味「国民皆兵」で重装歩兵として戦争に参加するのは富裕層の義務だと言われています。有名なのはスパルタの強兵とか、エパミノンダスの斜線陣とかですね。
このころは鐙が発明されていないので、騎馬は指揮官が使うくらいで、騎兵といえば戦車兵(チャリオット)のことですね、もちろんロバとか馬が牽くやつです。中国でも春秋戦国時代は戦車に3人乗って御者と弩兵と矛兵でという絵が良く見られます。多分、騎兵が居なければこの重装歩兵が平地での殴り合いは最強でしょう(諸説あります)。
さて、中世当たりの話に行くまではまだ少々時間がかかります。
まず、軍制について見てほしいのがマケドニアのアレクサンダー大王です。かの方は軽騎兵と重装歩兵の組み合わせで、ペルシアを滅ぼして版図を広げました。騎兵の機動力は恐ろしいものです。現代戦でも優速な側が戦術的に優位を占めます。ただし、まだ主力は重装歩兵です。
次に、共和制ローマ中期の時代、市民権をもっている男性はイロイロあって20歳から25年間、45歳になるまで兵役義務があってヨーロッパ各地を蹂躙しました。この紀元前の頃にあった軍は、個人の勇猛さで戦うよりも軍のシステムとして戦うというとても洗練された戦術思想でした。やっぱり戦いは数です。
さて、翻って中世ヨーロッパはどのような軍があるのでしょうか。じつは中世では領土を広げる戦争などはあまりなく、騎士が敵の王や貴族、騎士を捕まえて、身代金を貰うためにするのが主流でした。ですので、古代の戦争のように集団戦で戦うのではなく、名乗りをあげて一騎打ちみたいな個人戦が主流でした。しかも、騎馬隊はオスマントルコの常備軍ぐらいで、基本的には騎士が一人いて徒歩の従士が予備の武器等を持ってついてきて、さらに槍を持った歩兵(領民兵)がいて従軍します。もちろん常備軍ではないので練度は期待できません。で、この頃の騎士は、あのフルプレートの鎧ではなくチェーンメイルに急所部分を補強する装備が主流でした。ヘルメットも視界を遮らないタイプです。フルプレートが主流になるのは、百年戦争の頃に集団戦が復活してきて弓兵が中隊規模で一斉射撃して、騎士に壊滅的ダメージを与えてから、矢を通さないようにと使うようになったので中世でも末の方です。フルプレート導入は、重量増加と視界の限定で余計に騎兵の利点を失うという負のスパイラルを招き、騎士の地位低下を決定づけたそうです。
閑話休題、さて上記の諸侯軍は常備軍でもないし普段から集団戦の訓練などしていないので、細かい戦術行動ができません、というか指揮命令的に進めと停止と引けぐらいを太鼓やラッパで合図を出せる程度です。
また、話はそれますが一人の人間が直接指揮できる人数は何人だと思いますか。これもよく言われているのが5~8人ということです。なので、現代的な軍事組織では一個小隊(小隊長は中尉または少尉)が30~40名と言う編成でその中に分隊や班という形で構成されています。米陸軍の一般的な編成でいうと一個分隊(分隊長は軍曹)が10名でその中に班(班長は伍長)が5名で編成されています。そして、指揮官の命令が末端まで誤解なく伝わるように日ごろからの訓練をしていますし、命令を専門用語や簡潔な言葉で定義して、受け取る側が勝手に解釈できないようにしています。
振り返って、我らが中世ヨーロッパ風の異世界で軍事行動をする際の編成は、盗賊やモンスターから領地を守るくらいの規模で防衛部隊がある程度です、戦争するときは農民兵を集めて出征です(あれ?近世?)。ほぼ常備軍がないので上は公爵から下は騎士爵まで規模のマチマチな編成部隊の寄せ集めです。そして、軍隊内の符丁や用語で意思統一の訓練などしていません。こんなのに現代的な軍事行動をとらせることは規模が大きければ大きいほど、ほぼ不可能です。事前に魚鱗の陣で全軍突撃とか、鶴翼の陣で敵を半包囲してタコ殴りぐらいしか出来ないでしょう。まあ、右翼、左翼、前衛、後衛や中備の指揮官を任命して大まかな戦術目標を共有して、目標達成を遂行できる能力のある方面部隊司令を任命するぐらいでしょうか。それも、普段から為人をよく知っている相手ならともかく、噂で聞く程度の指揮能力だともう大雑把に指示を出すしかなく、例えば猪突猛進型の人を右翼に配置している場合、鶴翼の陣と言いつつ実は斜向陣で右翼が勝手に突っ込むのを中央と左翼でフォローするとか総指揮官の能力次第となります。まあ、武装が殴り合い型の中世風異世界であれば、魔法の性能次第でというところも考えられますし、兵のモラルとモラール次第で戦況も一変するとところもあります。しかし、昔の偉い人も「勝ちに不思議な勝ちあり、負けに不思議な負けなし」といっております通り、戦場にて対陣した時点でほぼ勝敗は決しているということです。そうです、魔法の攻撃力や兵の士気なども戦略面でどうとでもなるということです、実際に戦場で会敵する前にイロイロ手を回せる軍師がいればということです。まあ、うちのほうが国力あるし兵力も優勢だから程度の認識で戦端を開くようなおバカさんは桶狭間のようにどこかで足を掬われるという言うことです。
ここまでは、個人の武勇や隔絶した能力などがない、異世界的物語のアレな感じを含んでいないお話でした。次回は、じゃあ、俺TUEEEEな人外が居るような世界のアレな場合にはどうなるを考察してみます。
一つお断りを入れます。それは、日本で軍隊の話をすると、決まって軍隊は人殺しの集団だから要らない、知る必要もない、という方々が大勢います。まあ、デリケートな話なので、アレですが、おぢさんがそのような方々に遭遇した際に必ず尋ねるのは、「日本が外国に攻め込まれたらどうするの?」と。決まって答えは「3」ではなく、「日本は平和憲法のある国だから、そんなことは起きない、だから自衛隊はいらない」と大体、経験上9割はそう言われます。まあ、ウクライナ情勢でなんか矛盾する事を言い出してますが、危機管理っていったい。ええっと、逸れまくったのでアレですが、昔の凄い偉い人はこう言いました。
「敵を知り己を知れば百戦危うからず。」
さらに余談ですが、もし外国の軍隊が攻めてきたときに制服(軍服)を着ていない人が抗戦すると、ゲリラとして認定されて、民間人として国際法上の保護を受けられませんので、「退避(逃げる)」もしくは「投降(抗戦しない)」しましょう。
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