【新稿】『血まみれスケバンチェーンソーRED』2本

●『血まみれスケバンチェーンソーRED』前編 ネロの復讐(二〇一九年)バップ

●『血まみれスケバンチェーンソーRED』後編 ギーコの覚醒(二〇一九年)バップ


 『血まみれスケバンチェーンソー』は好評だったようで、わずか三年で、リブート作品が生まれた。それが『血まみれスケバンチェーンソーRED』である。

 リブートというのは、私も詳しいことは知らないのだが、ある作品について、「新規仕切り直し(いわゆる再起動)」することらしく、この作品も脚本・福原充則、監督・編集・山口ヒロキなどスタッフは重なっている。

 こそこそ作ったり、開き直ったりするのは美しくないが、この映画では、前作の主人公を務めた内田理央がナレーションで参加していて、関係の良好さが伺えたりして、堂々たる仕切り直しとなった。

 今回、鋸村ギーコを演じるのは、実写『女子高生の無駄づかい』のマジメこと一奏(にのまえ・かなで)役や、映画『咲』で注目を浴びた浅川梨奈。碧井ネロは、あの。……いや、「この・その・あの・どの」の「あの」ではなく、『あの』という芸名なのだ。

 素の『あの』は、ソフトの特典やユーチューブでも見られるのだが、なんだか「おい、お前、しっかりしろよ」と言いたいぐらい言動が「不思議」(ほんとうは「不思議ちゃん」と書きたかったが、さすがに死語でしょ)で、息を吸うのも大丈夫かと思うぐらいなのだが、いったん役に入ると、堂々たるキレっぷりで、うれしくなる。

 物語は、朝のバスでギーコが惨殺されそうになる所から始まる。このところ、なぜかいつもバスの中で改造死体たちに襲われるのだ。血まみれになったギーコは、銭湯に入るのだが、そこでも改造死体に襲われる。

 そこで物語は、大した理由もないのにいじめられているネロの話になる。教室のベランダから突き落とされそうになるネロは、それでも「今の内、突き落としておいた方がいいと思うぞ」、と強気だ。その日の夜、いじめていた女生徒の内、ふたりが改造死体に殺される。

 銭湯でチェーンソーが不調になったギーコは、仙崎(日高七海)の工場に行くが、ネロに派遣された透明人間が襲ってきて、バイトの女子が首を落とされる。戦いの末、姿が現われた透明人間は、オールヌードの女子だ。

 今回の作品では、前作が殆どエロいシーンがなかったのに文句が出たのか、無用なエロがあるのだが(銭湯で着替えるとか、このオールヌードとか)、結局は戦闘して殺すだけなので、あまり意味がない。エロは強し、というところだろうか。

 ネロは失敗作の倉庫へ行き、失敗作同士で戦わせ、生き残ったドリエ(替地桃子)をさらに改造する。ドリエ、という名前で分かるように、手がドリルになっている。

 ネロの狙いは、あくまでギーコの抹殺にあるのだが、ギーコはドリエが改造死体に襲われている所を助け、ドリル談義(どこのメーカーがいいかとか)で話が合ってしまう。ここでネロの怒りは頂点に達し、自らトンファ型のチェーンソーでギーコを襲う。

 今回の、ギーコを狙う理由は、ネロが「マキシマム ザ ホルモン」(語と語の間に半角スペースが入る)という実在のパンクバンドの熱狂的なファンだったことにあった。このバンドのメンバーが、ギーコの実家の解体屋でバイトをしていたのが、熱狂的なファンであるネロには許せなかったのだ。歪んだファン心理……って、つまんねー文章を書くな、私も。まあ、最大公約数で文章を書こうとすると、こういうことにもなる。

 そこからは、ギーコ、ネロに仙崎とドリエの入り乱れる戦闘シークエンスだ。ドリエの加勢もあって、ネロはギーコに倒される。ギーコはつぶやく。

「別に殺し合う必要はなかったな……」

 帰ろうとするギーコたちの前に、奇妙な仮面をつけた女が現われた。新生徒会長、ネメシス(護あさな)だ。彼女は、殺人は校則違反と言い放ち、ギーコたちをうぐいす学園樹海ヶ原刑務所に収監する。前編の終わり。


 そして後半。ネメシス率いる生徒会は、生徒たちを校則で縛り、平和のためなら実力行使も惜しまない、と改造死体もあっさり殺す。

 刑務所を脱走した仙崎とドリエは、ギーコが十字架にかけられ、囚人たちになぶり者にされている所に入るが、手に余る。そこへ現われたのが、謎の少女、ナグルシファー(佐野いずみ)で、拳ひとつで改造死体の首をすっ飛ばす力によりたちまち敵を倒す。実は彼女は、ギーコの幼なじみなのだった。

 どこか樹海の出口を探している内に、何かの声がきこえてくる。改造死体のアイドル、メロン(蒼波純)が、ライヴを開いているのだ。メロンは、ファンのオタクたちにギーコたちを殺すよう呼びかける。だがオタクたちは、人殺しを怖がって何もできない。

 キレたメロンの体から触手のような物が出て、オタクたちの養分を吸い込んで殺す。「黙ってあたしのために戦って死ねよ!」。更にメロンは、指先から銃弾を撃ち、ギーコたちも倒されていく。

 それでもギーコは、メロンに立ち向かう。オタクたちが持っているサイリウム(作中では「ペンライト」)は、鋭い刃を備えていて、それでギーコたちを殺せ、とオタクたちに命じるのだが、オタクたちはとまどうばかりだ。怒りを爆発させたメロンに、ギーコは宣言する。

「クズだな……リスクはすべて他人に押しつけ、自分だけ安全な場所でうまみを吸い取ろうとする奴はクズだよ!」

 ナグルシファーはサイリウムを手に入れて、メロンを殺す。

 ギーコとナグルシファーは、囚人私物管理室で仙崎と合流し、チェーンソーを奪い返し、改造死体と戦い、それと同時にドリエを探す。

 その途中で、ギーコは所内放送を聴き、放送室にネメシスがいると判断、乗り込む。仮面が吹き飛ばされると、いきなりネメシスは、魔法少女に変身。魔法のスティックでナグルシファーやギーコを好きなように操る。

 仙崎は、彼女が重力を操っていると見抜くが、とどめを刺そうとしたスティックは効かない。電池が切れたのだ。電池交換にもたつく内に、ギーコはネメシスを倒す。

 あとひとり、ドリエを助けようと探すギーコ。そこへネロが現われ、両手がドリルになったドリエを操って、ギーコたちを倒そうとする。

 しかしギーコはドリエの両手のドリルを切り落とし、無力化した。

 ついに最終決戦だ。ネロとギーコ、ふたりのチェーンソー戦は、延々と続く。やがてそれは、素手での殴り合いになるが……。

 ここから始まる戦いは、理由が分からない(ある物が飛んでくるのだが、それがどこにあったのか私には分からなかった)のだが、とりあえず、すべての物が落ちつくところに落ちつくので、問題は感じなかった。


 この後編も、映像特典が多い。その特典の中で、浅川梨奈は、「『あの』との距離感があってよかった」と語っている。

 これは限りなく正しい。映画を作る目的は、観客を楽しませることであり、和やかにピクニックへ行くのではないのだ。

 個人的偏見ではあるが、素の『あの』のような子は、学校で敬遠されたりしてしまうタイプなのではないか、と思う。そういう子と一緒に仕事をするとき、情が通じていると、戦いの力が鈍ることもあるかもしれない。

 そのような雑念を感じさせない少女たちの戦いは、思わずすがすがしくなってしまうのだが、……あ、それならそれでいいのか。

 唯一、疑問を持つのは時間だ。前編五二分、後編五四分というと短いように見えるが、通しで見ると一時間四六分ある。その長さを、スタッフは持てあましているようにも思える。メロンの件りなどは、明らかに蛇足でしかない。

 まあ、浅川梨奈の言うように、この映画は「お祭り映画」だと思って、気に入った所を仕事のBGVにするのがいいのかもしれない。


 この章は勢いで書いているので、改造人間物とゾンビ物が交錯するのだが、機会を見て時間軸に合わせる努力はするつもりだ。

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