【新稿】『爆裂魔神少女バーストマシンガール』

●『爆裂魔神少女バーストマシンガール』(一九)有限会社 西村映造、日活


 リブートもの、ということで、取り上げ忘れていたのが、『爆裂魔神少女バーストマシンガール』。「伝説のカルト・ムービー『片腕マシンガール』を極悪リブート!!」とDVDのパッケージにはある。

 たった十一年前の映画を「伝説の」と言う感覚が、私には分からないのだが、まあそんなことはどうでもいい。

 で、この映画のどこが『片腕マシンガール』かというと、主人公が腕にマシンガンを装着する、という所しかない。まったく好き勝手なストーリー、演出であり、これでは虎の威を借る狐、と言われてもしかたがないのではないか。

 気になる所をざっと拾うと、場所は「イシナリ区」と呼ばれている。人びとは貧しく、己の臓器を売って、かろうじて生きている。これが大阪の西成区をもじったものであることは、一目瞭然だろう。

 まず、ここで誰か止める人がいなかったのか、と思う。確かにかつて、現実の西成区は、スラム街で有名だったが、現在ではスラム化しているのはごく一部であり、それも改善が進んでいる──というのは、それこそウィキペディアでざっと見ただけでも分かる。別に架空の場所でいいではないか。偏見の「西成区」を使う意味が分からない。

 また、どうやって倫理規定をすり抜けたのかは知らないが、セリフでは、既知外(★注)とかカ×ワとか、放送禁止用語が飛び交い、障碍者を差別する描写もある。ことば狩りをしたくはないが、その単語の選択に、映画人生を賭けた覚悟はない。つまり、別に必要のないまま、子どもの悪ふざけを垂れ流しているだけだ。「親を連れて来い」。

 しかしまあ、それでも見てみなければ、評価のしようがないので、DVDを見てみる。女子高生のアミとヨシエは見世物小屋で地下アイドルをやって、かろうじて生き延びている。この時点では、ヨシエだけが片腕を失って、マシンガンを付けている。

 で、いろいろあって(★注)、ヨシエはマシンガンで大暴れし、臓器売買の元締めで街をシメている青山ダルマ(なんと根岸季衣)の息子(車椅子で、たぶん精神か知的かの障碍者)を殺す。更にダルマと戦いに行くが、捕まってしまう。激怒したダルマは──と書いた所で気がついて調べてみると、「ダルマ」というのも、手足を失った人を指す隠語で、テレビでは放送しない方向になっている。青山ダルマが青山テルマのもじりだという所から、その単語の選択は、やはり疑われる。

 話を戻して、ダルマは殺し屋協会に電話をして、殺し屋、橘吉凶(ききょう)を呼び、街の人びとを皆殺しにしていく(理由は分からない)。アミは、ヨシエを助けに行くが、ダルマはアミをさんざっぱら卑しめ、リンチにかけて、左腕を切り落とし、捨てる。

 ここまでで五十五分。ようやくアミも、失った左腕にマシンガンを装着し、そこでなぜかタイトルが入り、あとはずっと戦闘シーン。「起承転結教(★注)」の信者を連れてこい。私はこの作品を二度見たが、ラストがどうなるかの記憶がない。これ以上書いても、何の実りもないので、お好きな方、どうぞご解説下さい。


 なお、この映画は、思いもよらない(わけでもない)理由で、バッシングを浴びた。プロデューサーの西村喜廣が、この映画が上映された映画祭で、沖縄人(★注)を嘲笑う発言をし、それがあまりにひどかったので、炎上したのである。おかげで西村氏は映画祭のスタッフから下ろされ、謝罪したが、これもまた、子どもの言いわけだった。



【注】

・既知外──筒井康隆以来、「基地外」と表記することが一般的だが、私はその、「基地の外」に住んでいるので、こう書かせていただく。

・いろいろあって──悪ふざけに力を入れるあまち、ストーリーの展開がよく分からないのである。こういう所が、随所に出てくる。

・起承転結教──エンタテインメントなら、なんでも起承転結に当てはまらないと非難する人たち。私は序破急+α、のαで勝負しているので、場所によっては非難囂々らしい。この話は長くなるのでこの程度で。

・沖縄人──沖縄ネイティブの人は沖縄人、またはウチナーンチュと呼ぶ。私のようにただ沖縄に住んだだけの内地の人間は、シマナイチャーと呼ばれる。


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