第四節の3 テレビ東京版『七瀬ふたたび』
●テレ東版『七瀬ふたたび』(九八年四月~七月)丸紅・電通・円谷映像
(ご注意・テレビ東京版『七瀬ふたたび』の詳細と結末を詳しく語っています)
九八年の『七瀬ふたたび』は、ソフトで見ると、全一二話が三話ずつ四巻に分かれており、「本作はシリーズ(全4巻)ですが、各巻ストーリーが完結していますのでどこからでもお楽しみいただけます。」という注意書きがある。ずいぶん大胆なお言葉だが、私には、そうは思われない。
第一巻「対立概念」で描かれるのは、都内のクラブに仕掛けられた時限爆弾を予知する七瀬(渡辺由紀)、ノリオ(安達哲朗)、恒夫(谷原章介)の三人の奮戦だが、予知能力者の恒夫は、「未来は変えられない」、として事件への関与は消極的である。最初の回で、ノリオが原作及び今までの映像と違って、年齢がかなり高くなっている(中学生だろうか)ことや、恒夫がかなり高名なイラストレイターであることなどが示される。結局、恒夫が時限爆弾を解除したのに、クラブはガス爆発で爆破されてしまう。
第二巻「上位自我」では、七瀬は透視能力を持つ西尾と、念動力を持つヘンリー(SLAY ATAGA)に出会い、クラブに現われた強盗に絶体絶命の危機に陥るが、上位自我であるヘンリーの力で強盗は相討ち同士になって死ぬ。七瀬に迫った西尾も、ヘンリーにより、惨殺される。七瀬は、超能力を持った者を殺して回る機関の存在を知り、海外へ出ようとする。
第三巻「心的力域」では、海外へ行こうとした七瀬、ノリオ、ヘンリーの三人は、パスポートを持っていない、という問題に気づく。偽造屋の黄(ウォン。演じるのはでんでん*)に殺されそうになる。黄は彼らを臓器売買にかけようとしたのだ。一方、狙撃手に撃たれそうになった七瀬は、タイム・トラベラーの漁(すなどり)藤子(篠原直美)に出逢い、その力で時をさかのぼり、事件をないものにしようとするが、……そこから先が分からない。
私の知人は、この作品を「シュール」と表現していたが、実際のところ、七瀬たちが何度も時をさかのぼることや、事件を追う松井刑事(若松武史)の追求などは、話が込み入りすぎて、正確に理解することは、私にはできかねる。しつこい追求の末、松井刑事は七瀬に、「君は超能力じゃない」、人の心が読めるという妄想があるだけ、と告げて、七瀬を解放し、自らは死んだらしいのだが、それすら明らかには分からないほど、話は入り組み過ぎている。
そして第四巻「涅槃原則」では、藤子の叔父で獣医の漁連平(筒井康隆)が七瀬たちに理解を示し、みんなで北海道の牧場へ逃げよう、と提案するが、飛行機のチケットを取ってしまったことから居所を探られ、死ぬ。恒夫も、ここへ来て急に、七瀬への愛を叫んで死ぬ。七瀬たちは、不気味な殺し屋の(という設定らしい)子どもたちに遭う。この社会への「革命を起こそう」、と子どもたちのリーダーは言うのだが、藤子が未来からタイムトラベルしてきて、五分後、七瀬たちが襲われることを告げる。「七瀬さんは、普通の人間と(超能力者が)共存するための架け橋」、という言葉を残して絶命する藤子。ノリオとヘンリーは、敵の力で、鉄骨のようなものの下敷きになり、瀕死の状態だ。機関のリーダーと、七瀬、そして七瀬に命じられることで力を発揮するヘンリーとの激闘があり、七瀬はノリオを逃がす。「あなたは生き延びなきゃだめ。ここで闘いが終わったわけじゃないの。私たちの闘いを他の能力者に伝える使命があるの」。
ここで映像は、七瀬たちの幸せな生活の様子を描く。だが、気がつくと、それはノリオの幻影だ。現実のノリオは道ばたでアクセサリーを売っている。
そして、七瀬たちがどうなったのか分からないまま、話は唐突に終わる……。
こうして四巻を通して見た、私の結論を言えば、「どの巻から見ても、よく分からない」、というのが正直な感想だ。私はすでに、村井さだゆき氏脚本の「ねらわれた学園」という難解な映像を見ている。しかしあれは、一本の太い筋を通した上での意図的な難解さであり、この作品とは大いに異なる。何しろ、どこから見ても同じだ、と言うのだ。筋も何もあったものではない。
実際、私は大いに当惑している、としか言いようがない。
*でんでん――お笑い芸人を経て、味のある脇役として活躍中。本書の読者には、黒沢清監督『CURE』の、交番の警官を想起されたい。
(この節、つづく)
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