第四節の2 フジ『木曜の怪談』枠『七瀬ふたたび』

●フジテレビ『木曜の怪談』枠『七瀬ふたたび』(九五年~九六年)


(ご注意・水野真紀主演の『七瀬ふたたび』の結末を明かしています)


「神様。なぜ超能力者をこの世に遣わされたのですか。人類を試すためだったのでしょうか。それなら、もしそうだとしたら神様、人類はまだまだです。」。

 原作『七瀬ふたたび』の幕切れ寸前に七瀬が吐く言葉であり、NHK版の同作でも、ラスト近くの七瀬のセリフとして、印象に残るものだが、ここにご紹介する、フジテレビ『木曜の怪談』版の『七瀬ふたたび』では、そのセリフの前の部分(原作で)が、口調を変えて使われている。

「神様、どうして超能力なんていう突然変異を人類に与えたのですか。私たちが死んだ後で、もっと多くの超能力者たちが生まれるのですか。人間を自然淘汰するために、この世の秩序を壊すために……私たちは、生きていてはいけない存在なのですか」

 この部分が、『七瀬ふたたび』の肝となる命題、即ち、なぜ超能力が存在するのか、それになんの意味があるのか、という問題への解答である。だが、フジテレビ版『七瀬ふたたび』は、それを無定見に引き写したわけではない。なぜなら、上のセリフに続く、重要な七瀬のモノローグが、カットされているからである。

「じゃ、その人たち(超能力者)は普通人を自然淘汰するの。ねえ。どうなの。なんとか仲良くやっていくことはできないの。ああ。そんなこと、わたしにとってはもうどうでもいいことだわ。でも、その時は、お願いだから、その人たちにわたしたちのような苦しみを味わわせないでね。迫害される苦しみを、できるだけ柔らげてあげて頂戴。」

 七瀬たち超能力者が、どうして人類と共存できないのか、については、前の項で触れたが、このフジ版では、よけいなセリフをカットして、私たち人類が、超能力者とは結局共存できないものなのだ、という厳しい結末を見せている。少なくとも、私はそう思う。

 ドラマだけを見ていると、フジ版『七瀬』は、NHK版の半分の長さ(三〇分×六話)ということもあり、ダイジェストのように見えてしまうおそれがあるが、実際のフジ版は、原作を忠実に活かして描かれた作品である。

 生活のために水商売を始める七瀬、そこで起こるダイヤモンド紛失騒動、いきなり船に乗って旅に出る七瀬たち……殆どが原作通りである。ラストシーンで、先ほど紹介したセリフを呟いた後、七瀬は、仲間たち超能力者が幸せに生きられるパラレルワールドを幻視しつつ、意識を失っていく、そこまでも忠実に描かれている。

 このフジ版『七瀬』が、どことなく盛り上がりに欠けるように感じるのは、おそらくは、その忠実さ故であり、行間を描き出す力に欠けているのだろう、と私は思う。もうひとつの理由は、私が七瀬役の水野真紀を、あまり好きではないからかもしれない。

 しかし、それは大きなお世話というものであり、これはこれで、立派なひとつの作品なのである。


(この節、続く)

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