第二節の5 古賀新一による二本の『エコエコアザラク』

『エコエコアザラク』の原作者、古賀新一には、今までに直接関わった映像作品が二本ある。

 一本は、〇八年七月の「画ニメ」と呼ばれる作品だ。東映アニメーションの制作となっているが、原作・脚本・原動画が古賀新一であり、果たした役割は大きいと思われる。

 この作品だが、絵は殆ど動いていない。アニメではない、静止画などをカメラワークで見せる作品は、楳図かずおの『猫目小僧』などがあるが、それよりも動いていない感じ。

 幸いにして、合計二三分で二話、という構成なので、それほど苦痛ではないのだが、ほぼ完全な紙芝居を見せられてもなあ……と、思わないではない。

 それを無理やり棚に上げて言えば、原作の、特にミサに関わるブラックユーモアの部分が映像化された、初のエコエコアザラク、と言ってもいいのではないか、と思う。これはこれで貴重だ、とは言える。

 監督は長江俊和だが、きわめて古賀新一のプライベートフィルムに近いできばえだ。


 もう一本は、一一年に古賀新一が原作・脚本・監督をして、山口ヒロキが監督補・編集を務めた、『エコエコアザラク 黒井ミサ ファースト・エピソード』(制作はジェネオン・ユニバーサル・エンターテインメント)である。

 この作品では、伝説の大魔術師・ガンガーガム(栩原楽人)に、ミサ(前田希美)が闘いを挑まれる。ガンガーガムは、魔術師集団をあやつり、ミサを翻弄する。それに対して、ミサの叔父が、ガンガーガムを倒すための、ある道具を発見し、ミサにそれを遣うよう、つぶさに指示するのだが、ミサはなぜか、その術の使用を拒絶する。この意味が分からない。忌避する理由が描かれていないのだ。

 もっと分からないのがガンガーガムの行動で、女子高生を数人拉致するが、その後は、その辺のチーマーっぽいあんちゃんの仲間たちと、ひたすら飲んで騒いでいるだけなのである。作中では「サバト」と説明されているが、そんな大したものには見えない。

 結局、ミサは叔父を信じ、山奥へ行く。そこで魔術師集団が攻めてくるのだが、事件はあっけなく終わる。何が『ファースト』なのかも、明らかにはならない。

 六一分という時間を、監督はもてあましているように見える。また、ガンガーガムとの対決が、直接のものではない。ミサとガンガーガムは、一度も向き合わないのだ。

 あと、これは書くべきかどうか悩んだが、前田希美のビジュアルも弱い。主役の顔になっていないのだ。これは、本人と言うより、製作サイドの責任だろう。

 まあ、制作現場がきつかったのだろうな……としておくしかなさそうだ。


 長くなったが、これが二〇二〇年七月現在、映像化されている『エコエコアザラク』の全てである。

 ここで、再び佐伯日菜子のテレビ版『エコエコアザラク』に立ち返ると、この番組が好評であったらしく、テレビ東京は、『ねらわれた学園』『七瀬ふたたび』と、少女ヒーロー作品を連発する。これから、それらを見ていこう。


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