第二節の3 『エコエコアザラク~眼~』

●二節の4『エコエコアザラク~眼~』(〇四年一月~三月)エイベックス、円谷映像


『エコエコアザラク』は、今世紀に入って〇四年、再びテレビ化された。

 この作品の解釈と評価は、人それぞれだと思う。かなり難解で、ちょっと眼をそらすと、重要な展開上のヒントを見逃してしまいそうなのだ。私個人は、そういう作品もあるべき(「あってもいい」ではなく)と思っているが、紹介のしかたは難しい。

 本作でのミサ(上野なつひ)は、一年分の記憶を失っており、自ら「黒井ミサ。魔女」と名乗る。それに絡んでくるのが、南淵高校でのイケメン、岸田を巡る少女たちの競り合いと呪い、それとは全く別な、邪眼を持つグラビアアイドル・山中博美(来栖あつこ)がその力で仕事を得るまで、さらに私立探偵、田上寛(渡辺いっけい)の調査と介入、そして結末では、都心臨海の再開発を進める加茂康夫(西田健)と、さまざまな人物による独立した「眼」に関する物語が語られ、その合い間で放浪するミサは、やがて自分の真の過去を知ることになる。

 ストーリーラインが幾筋も独立して進み、時にからみ合う本作は、あえて説明をせず、文字通り、見る人それぞれに、解釈をゆだねているところがある。それはそれでいいし、小中千昭、村井さだゆき、岡野ゆうきの佐伯日菜子版『エコエコ』初期エピソードを書いた三人による脚本は(今回は、小中氏がシリーズ構成を務めている)、決して質の低いものではない、と思われる。小中氏の手がけた作品では、『serial experiments lain』(*)に相通ずるものがある。決して散漫な物語ではないことは、すべての要素がひとつにまとまって、クライマックスになだれ込む結末を見れば、分かるだろう。

 ただ、特に中盤に至るまでは、散文的であり、そこらの作品と同じく気楽に見ていると、置いていかれてしまう、ということは、言ってもかまわないと思う。私は本シリーズを三回見ているが、まだ、理解し尽くした、とは言えない。

 どうか、これからご覧になる方は、二度、三度と見ていただきたい、と思う。


 なお、この作品について語るなら、ジョルジュ・バタイユの小説『眼球譚』に触れるのが筋というものだろうが、話し始めるときりがないので、ここでは敢えて触れなかった。


【注】


*serial experiments lain』――九十年代を代表するアニメ。サイバースペースと日常の高校生活の間でさまよう、内気な少女・玲音の物語。シナリオブックが出ていて、大変にお勧め。

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