第二節の1 二本の映画『エコエコアザラク』
●二本の映画『エコエコアザラク』ギャガ・円谷映像(九五)
(ご注意・映画『エコエコアザラク WIZARD OF DARKNESS』『エコエコアザラクⅡ BIRTH OF THE WIZARD』のストーリーに触れています)
古賀新一原作のホラー漫画『エコエコアザラク』は、何度となく映像化されている。その走りが『エコエコアザラク WIZARD OF DARKNESS』(九五)で、黒井ミサを初主演の吉野公佳、友人の倉橋みずきを菅野美穂が演じた。
ゆうばり国際冒険・ファンタスティック映画祭で賞を取ったこの映画だが、私はあまり乗れない。理由のひとつに、レズ描写が濃厚だったり、嘔吐のシーンがあったり、生理的に受けつけないのだ。
それを凌駕するストーリーがあれば、また評価も変わるのだが、武上純希*による脚本は(原案は佐藤嗣麻子監督)、校内に閉じ込められたミサほかの人物が、ただ右往左往しているばかりだ。事件の鍵を握る白井響子(高樹澪)とミサとの対決は、八二分の上映時間で、六六分目にようやく始まり、しかも、その闘いは、肉弾戦で勝つという……つまり、クレバーな部分がないのだった。
ただ、ここまで我慢をして見ていると、驚くべきどんでん返しが待っている。菅野美穂のキレっぷりが、かっこいいのだ。菅野美穂のファンには、お勧めしてもいいかもしれない、と言っておこう。
前作の人気を受けた形で作られた二本目の『エコエコアザラク』は、ミサが魔術を使うようになる前を描いている。今回の脚本は、佐藤嗣麻子監督自身によるものだ。
明治一三年(一八八〇年)、ひとつの村が、原因不明のまま大量虐殺によって消滅した、という所から、話は始まる。うってかわって現代、明るい少女のミサは、学園にも溶けこんでいるのだが、そんなミサを口説こうとした岡崎(斎藤暁)が惨殺され、危険がミサにも迫り、謎の男、斎呀(四方堂亘)に助けられる。怪異の『もの』は、友人、高梨翔子(白鳥智恵子)の父親に憑依して、ミサを狙い続ける。
そのうち、斎呀は消滅した村の話を始め、村の魔女、霧江(冨永アミナ)が、百年後に生まれるミサを狙っていることが分かる……。
クライマックスの対決は、流血の破壊戦になる。徹底的に壊し尽くす。その迫力を、どう評価するかだろうが、私は、前作の肉弾戦と、あまり変わらないという印象だった。
天本英世が、ミサを守る一族の長老で出ているので、吉野公佳と天本英世のファンは、見るべきかもしれない。
こうして、私には肌合いの合わなかった二本の映画だが、一定の成功を収めたらしい。その結果、歴史に残るべき、少女ヒーロー映像が生まれた。テレビ『エコエコアザラク』である。
*武上純希──この方は、敢えて悪い書き方をすると、「中身が薄い」脚本を書くことで、世間の評判はあまり良くないのだが、機会があって、ご一緒に仕事をしたとき、なぜ重用されるかの、一端を知った。武上氏が、例えばシリーズ構成をすると、会議が非常に円滑に進むのだ。ご本人のできは……まあ、もういいじゃありませんか。
(この節、つづく)
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