第一節の9 『アンドロメディア』
●『アンドロメディア』(九七年)松竹
(ご注意・映画『アンドロメディア』の結末に触れています。ご注意下さい)
もしこの作品を、同じ三池崇史監督の『ゼブラーマン』や『妖怪大戦争』(角川映画版)以前に観ていたら、その後の三池作品を観ることはなかっただろう。
そもそも冒頭、砂浜にソメイヨシノの樹が一本、生えているのがなぜだか植物学的に分からない*。そこを思い出の場所にしている人見舞(SPEEDの島袋寛子)と青年・ユウ(原田健二)が、樹の下でファーストキスをする。その後すぐ、舞は交通事故で死んでしまう。
その死を悼んだ父親の俊彦(渡瀬恒彦)はAI、即ち人工知能の開発者なのだが、娘の記憶を開発中のAIに転写して、パソコンを通して会話ができるようにする。その直後、俊彦は勤務している会社の殺し屋・黒澤(竹中直人)に殺されるが、パソコン部のユウにAIはダウンロードされ、そのダウンロードされたノートパソコンを持ってユウは逃げ回る。この映画世界には、バックアップという概念はないらしい。
逃走の過程で、AIは次第に人間らしくなっていくのだが、ずーっと出ているAIの舞は、ずーっと上半身だけで、パソコンっぽい棒読み台詞を繰り返す。公開年でも充分に時代がかった描写だった。
途中、仲間たち(DA PUMP)が倉庫でダンスを延々踊ったり(説明不能)、はっきり言って顔見せに過ぎないとしかいいようのないSPEEDの他のメンバーの、殆どカメオ出演があって、いわく言いがたい結末を迎える。バックアップとかダウンロードへの知見があまりにもなさ過ぎる、と言えよう。
ただ、調べると、この映画を撮った頃のSPEEDは、ハンパではなく忙しくて、むりやりスケジュールを空けさせなければならない状態だったことが分かる。それでも撮らなければ、次はないのが映画界だ。脚本はずたずたにカットされ、話の要となるべき渡瀬恒彦さえも出番が大幅に削られ、物語を成立させるほど登場していない。
この映画は、「ひどかった」と言うより、「悲惨だった」と言うべきだろう。それでも未だに生き延びている三池監督のプロ根性には感心した(本気で)。
なお、結末にまで触れるかどうか、最後まで悩んだのだが、まだ中古ソフトが一応あるし、気が進まないので略す。ただし、個人的には、お勧めはしない。
*植物学的に分からない──紙の本で出たとき、そう書いたのだが、それが素人の浅はかさ。こういう場所もあるのだそうな。ケチをつけて申しわけありません。
(この節、終わり)
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