第一節の6 『禁じられたマリコ』(Ⅳ)

 ついに警察が前田について調べ始める。

 弘子は麻里子に、前田が実父だと告げる。ベトナム戦争で、高木が消息を絶ったと知った弘子はサイゴンへ行き、前田と出遭って、自暴自棄になって結ばれてしまったが、日本へ帰ってきた弘子は、高木が生きていたことを知り、そして麻里子が生まれた。

「どうして私を産んだの? 私、産まれたくなかった!」

 麻里子に迫る前田。「信じたくない!」麻里子は火をおこし、倒れる。

 美也子が竜一を案じている。慰める麻里子。だが、前田を許すことはできない。麻里子は竜一の病室へ行き、自分が前田の子だ、と話す。復讐をやめてくれ、と言う麻里子。反発する竜一。

 港へ行く前田。もう用のない黒木を、前田はピストル自殺させようとするが、黒木はなんとか助かり、杉浦邸へ転がり込む。その話によると、前田はベトナム戦争で米軍に訓練されたサイキック・ウェポンだと言う。

 美也子に言われて弘子は警察へ行く。前田は美也子に弘子の行く先を訊く。めぐみは弘子が警察へ行ったことを霊視。すっかり前田の傀儡となっている。それを感じ取る麻里子。

 前田たちは警察へ。供述中の弘子の前で、刑事たちが操られる。「馬鹿な真似は止めるんだ。さあ、弘子、戻りなさい」と前田の声が響く。危機を悟って逃げ出すと、そこに前田とめぐみがいる。その前に麻里子が現われ、超能力で車を停める。めぐみと前田と、麻里子の対決。しかし麻里子は、肉親と闘いたくない。それをいいことに、麻里子を翻弄し、倒し、去る前田たち。光井が麻里子を助けに来る。前田たちの車を尾行する黒木。

 光井に麻里子は言う。「実の父親だから、私が倒します」

 光井は麻里子をアメリカに連れて帰るよう、元太郎を説得する。警視庁は、一連の事件の中心に前田がいることをつかみつつある。

 黒木が麻里子に電話。弘子は無事だ、とだけ。麻里子は警察に電話して、黒木が山形県鶴岡市に行ったことを知る。鶴岡には、山形に前田のゴルフ場がある。元太郎たちは口実をつけて、麻里子をアメリカへ行かせようとするが、麻里子は家を飛び出す。元太郎は、鶴岡へ行く決意を固めるが、加奈江が心労で倒れる。

 麻里子の超能力は、異様に高まっていた。鶴岡に来た麻里子は、黒木に案内されて、ふもとの宿へ。それをテレパシーで知るめぐみ、おびえる。竜一は身動きが取れず、ノボルを鶴岡に行かせる。

 ジープで前田たちを追う、黒木と麻里子。元太郎と光井、ノボルは宿へ集合。そして竜一もいる。

 クラブハウスへ乗り込む黒木と麻里子。と、念力が黒木を倒す。前田とめぐみの罠だった。超能力の対決。銃が麻里子を狙う。間に入った黒木が撃たれる。逃げる途中、黒木、「ひとつだけ、頼み聴いてくんないかなあ。あんたのこと、エリコって呼ばせてくんないかなあ」「妹さんなんですね」「エリコ、ごめんな。お兄ちゃん……」黒木、絶命。

 ホテルで光井に、麻里子は告げる。「誰かがあの人を倒さなくちゃいけないんです。これが私の運命なんです」。

 港へ向かう前田たち。船で国外逃亡するつもりだ。止めようとする美也子をかわして、前田は逃げる。元太郎たちが来て、前田たちを追う。残された美也子の許へ、竜一が来る。「お前が好きだ」。

 麻里子は弘子とめぐみに逢う。そこへ前田。麻里子の超能力で火が起きる。

 雪原へ行く麻里子、前田の手下を倒す。ひとりで逃げる前田。「実の父親を殺そうとするのか」「父親だなんて、言わせない。あなた、人間じゃないもの」麻里子は前田を倒そうとするが、できない。前田は覚悟を決めたというのに。

 吹雪の山で、前田は麻里子を救って「ここが、私にちょうどいい死に場所なのかも知れん」と、小さな山小屋へ行く。

 前田の告白。アメリカの超能力訓練所からベトナムへ派遣された前田は、生き延びて、麻薬組織を作っていた、と。ついに罪を認める前田。麻里子は最後の力で、前田をクラブハウスへ飛ばし、自分は雪の中に倒れる。

 夜のホテル。突然、ピアノで『別れの曲』を弾き始めるめぐみ。意識がないように見える。元太郎や光井らは、麻里子を探すが、見つからない。

 前田は警察に自首する。元太郎、「先生。これで、ほんとうに何もかも終わったんでしょうか」しかしめぐみ、麻里子が歌っているのを聴く。それが『別れの曲』。

 めぐみに先導されて、一同は雪山へ。と、一角がまぶしく光り始める。微笑む麻里子、二秒ぐらい。しかし、その後はどこか、あらぬ方向を見つめている。ナレーション。

「麻里子は復活した。奇跡だった。麻里子はいま、新たに甦ったのだ。誰よりも人を愛し、誰からも愛される娘、マリコとして」

 こうして、物語は終わる。が……。


(この項、続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る