第一節の5 『禁じられたマリコ』(Ⅲ)

 弘子は家に帰り、前田に「十四年前までの記憶が戻らない」と訴える。しゃあしゃあと嘘の過去を語る前田。

 麻里子は不良たちに襲われ、火をおこす。助けに来た光井は、麻里子の目が見えないことに気づく。人格破壊はそこまで進んでいたのだ。そのとき、ついに麻里子は、光井を好きになる。そして光井も……。

 竜一は町医者、村沢(汐路章*)に、弘子の記憶を取り戻させようとする。村沢の催眠術にかかった弘子のことばから、麻里子は彼女が自分の母だ、と確信する。

 一方、美也子は真相を知り、アジトへ謝りに来る。竜一と美也子の間にも、愛情が生まれる。しかし美也子は、竜一に詫びるため、手首を切って自殺を図る。

 前田は、麻里子が弘子を実母だと知ったことに気づく。しかし弘子は、麻里子が美也子を自殺へ追い込んだと思い込み、「前田を信じる」と告げる。

 翌朝、前田はめぐみといさかいを起こし、超能力で動かそうとするが、めぐみはいつの間にか超能力を身につけており、その強さは前田を跳ね飛ばすほどだった。

 杉浦邸へ連れてきた弘子が、実の母だと知った竜一。前田は黒木に、弘子を連れてこいと命ずるが、黒木はもう前田に顎で使われることにうんざりしていて、断わる。

 弘子と情の通じた竜一は、前田に逢いに行く。杉浦邸を前田の部下が襲うが、麻里子が追い払う。麻里子は自分の娘だ、と知った弘子は、錯乱して、出て行く。

 竜一は前田に面会。しかし、実父、高木のことを思い出すと、前田を許せない。同じように父を許せなくなった美也子と竜一は、幼いキスをする。

 村沢に逢いに行った弘子は、催眠術を受ける。「ひとつ以外は分かった」と村沢。催眠中の発言を、弘子はテープで聴く。前田が麻薬に手を染めて、正彦がそれを追っている所で終わっている。

 村沢は前田の手下に殺され、弘子も連行されそうになる。麻里子が現われて手下を倒すが、自分も倒れる。このとき初めて、弘子と麻里子の間に親子の情が通じる。

 前田は麻里子に遭い、弘子が家へ帰るよう言ってくれ、と頼む。麻里子は断わるが、前田は子どもを操って麻里子を襲い、女生徒を操って光井を襲う。次は元太郎を襲う、と告げる前田。元太郎の車を運転する矢部(佐々木勝彦*)が失神させられ、事故を起こす。

 それでも麻里子は弘子を前田に会わせたくない。しかし弘子は、母親の務めとして、家へ戻る。そのいきさつを聴いていた黒木は、思わずもらい泣きをする。

 前田は弘子を超能力で操り、偽の遺書を書かせるが、美也子が止める。そのままふたりは逃げようとするが、吉岡たちに足止めされる。それをテレパシーで察知した麻里子は、吉岡たちを炎上させ、前田邸へ。しかし、めぐみが立ちはだかる。実の妹とは戦えず、前田邸の前で倒れた麻里子を、美也子が抱き起こし、猛省する。

 失明した麻里子を助けたのは、黒木。公園の一角で親切になった黒木に、麻里子は光井への初恋を打ち明ける。「ここで待っていれば、あの人が来るんです」。そのことば通り光井がやってくる。麻里子は自分の思いを光井に告白し、そのまま倒れる。

 麻里子は警察に行き、前田を弾劾する。前田は黒木になんとかしろ、と言うが、黒木は、「俺の力にも限界ってものがあるんだ」、と言い、前田に真相を話せと迫る。

 自分の異変に気づき始めためぐみは、弘子と、前田までを拒絶して、飛び出す。竜一たちのアジトでは、美也子が「還りたくないの、あの家に」と訴える。そこへめぐみが来て、「帰ることないわよ」、と。めぐみはポルターガイスト現象を起こし、倒れてしまう。

 光井は末永教授の研究室にめぐみを連れて行くが、機器が爆発し、手がつけられない。前田は、麻里子の力を使えば、めぐみを助けられる、と頼む。「治したら、自首してくれますか」、問う麻里子。前田は約束する。麻里子は一日の猶予をもらい、ホームパーティーを開く。無理をしてはしゃぐ一同。

 翌日、麻里子は前田邸の前へ。黒木が割って入る。「やめるんなら今だ。連れて逃げてやる」。しかし麻里子は門の中へ。黒木は竜一に電話をする。

 前田邸の地下室。前と同じような水槽を使う。部屋の中に風が吹き荒れ、めぐみは目ざめるが、麻里子はぐったりとしている。「前田さん、私との約束、守ってくれますよね」「ああ」。しかし前田は、めぐみは麻里子のパワーを吸収して、より強くなったはずだ、とほくそえむ。激怒した竜一が、麻里子を連れて病院へ。もちろん前田は、約束など守らない。

 アジトに黒木が来る。ピストルを貸せ、と竜一が迫る。事情を察した黒木は、わざと自分を殴らせ、ピストルを奪わせる。港の倉庫で前田を狙う竜一だが、手下に撃たれ、逃げる。遺されたピストルから、前田は黒木のものだ、と悟る。逃走中、事故を起こして、竜一は麻里子を呼ぶ。テレパシーが通じ、麻里子は目ざめる。一方、弘子はベトナム戦争のことを思い出した。家へ帰った高木に、弘子は告げる。「麻里子はあなたの娘です、あなたの」「何っ?」


*汐路章──『仮面の忍者 赤影』の「魔風雷丸」で知られる俳優。ウィキペディアの叙述が正しければ、『蒲田行進曲』の階段落ちを演じた。

*佐々木勝彦──昭和『ゴジラ』シリーズに、よく出演している俳優。


(この項、まだ続く)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る